風景の発見
★★★★☆
一昔前、セカンドハウスだなんだと言って、都会の人間が自然の中に別荘のようなものを持つというのが流行った(今もあるのかな?)。そういうことをしている人たちは、自然の中に家を構えるというその目標を達成したとき、きっとこう思ったのだろう、「ああ、これで失われた自然美に囲まれた生活ができる」と。
しかし、この本の著者、オーギュスタン・ベルクに言わせれば、「んなもんは、最初からない」、ということになるだろう。
本書は、主に絵画という芸術空間における「自然の風景」というものが、近代化、ジャポニズムなどの影響を受けつつ、後発的に<発見>されたことを明かす。
この本を読むとわかるのは、我々は現代人が目にする「風景」とは、二重の意味で前近代の人々が見ていた単なる「環境」とはまったくの別物である、ということだ。
ひとつには、科学技術の発展などの外的な変化によって、見た目が変わるという単純な客観的な意味での別物ということになる。
もうひとつは、主観。もし我々数百年前にも存在した山々に美を見出したとしても、同じものを見て、わずか数百年前の人間にはそこに美など存在しなかった。
両者の主観には、客観的現実以上に超えがたい断絶が挟まっていたのだ。