この招待には応じるべき。
★★★★★
本書は日本国憲法のについての入門書です。
特色としては、憲法の体系に沿っていわゆる論点を24個ピックアップし、
読み切り形式で解説していることが挙げられます。
各論点につき、判例や基本原理、
さらには日本法のベースである欧米の憲法・法思想にも目配りして解説がなされています。
全般的にオーソドックスな記述なのですが、
ところどころに渋谷教授独自の見解がちりばめられており、
現在憲法の講義を聴いている人には大いに参考になると思います。
なお、あとがきの、憲法論議の過剰と過少という話は、
まさに昨今の憲法をめぐる状況を的確に言い表していると感じました。
最適!
★★★★★
本書は芦部「憲法」の副読本として使うのが一番です。
憲法の入門書として書かれてはいるのですが、内容は大学の法学部で学ぶ憲法の授業を噛み砕いてわかりやすく説明しようというものです。
一般の方が憲法について触れようというよりも、法学部の学生や資格受験生が憲法の理解を深めるのに役立ちます。
もともと憲法は抽象的でわかったようでいまいち理解しきれない科目です。
本書は、いわば身近な具体例を通じて憲法の体系書では理解しきれないところを具体的に考える材料を提供してくれています。
深いがあっさり読める入門書
★★★★☆
タイトルから明らかなように入門レベルの本である。高卒程度の読書力があれば誰でも読めるだろう。
憲法の通説体系を、靖国参拝問題・ポルノ問題等の具体例を通じ説明する。きちんとした学者が書いたオーソドクスな入門書であり記述に信用がおけること、媒体が岩波新書であり入手しやすいことが本書の特徴。ありがちな誤解をただしていたり、一部高度な議論も含まれていたりと、個人的にもお勧めである。
単体の入門書としても利用できるが、お勧めなのは、芦部『憲法』等一般的教科書の副読本として使うことだ。本書は、通説の背景となる考え方を、具体例を通じデスマス体で平易に記述しており、教科書の抽象的な記述を補うのにうってつけだ。法学部の生徒であれば、大学一年の夏くらいまでに読んでおくと学問的理解がすすむだろう。
こういう入門書が欲しかった。
★★★☆☆
現司法試験考査委員が執筆した入門書。本来、一般向けの教養書として書かれているので、とても分かり易い。この手の本は、「憲法総論」や「基本的人権」中心に書かれたものが多く、「統治機構」まで満遍なく書かれている本書は希少だ。気楽に読んでみよう。
なかなかいいのでは
★★★★★
2004年に第二版が出版された『憲法1人権』『憲法2統治』(有斐閣アルマ)は主要な判例・学説にも幅広く目配りしながら体系的に叙述された質の高いテキストだと思うが、その共著者の一人が執筆したのがこれ。
「一般市民に憲法の本質を正確に伝えて、憲法問題を考える手がかりを基礎から解く入門書が不足している」(あとがき)という問題意識から書き上げられたということだが、それにとりあえず十分応じられたのではないか。24のQ&Aの中に現在の憲法学説のスタンダードな知見が簡明にまとめられている。
もっとも個人的には異論もある。例えば、著者は現行憲法が「帝国議会における自由で闊達な審議と裁決を経て」成立している、と説く(p29)。憲法学者にはこういう言い方をする人が多い気がするが、当時の占領行政の実相を考えると少し一面的な記述ではないだろうか。
ともあれ、現行憲法(とその理解・運用のありよう)を肯定するにせよ否定するにせよ、まずはその中身をよく吟味しなければ始まらない。
改憲が現実味を帯びて政治日程に上っている今、多くの人が一読して損はない一冊だと思います。