本書は、名作『ブリキの太鼓』で有名な巨匠シュレンドルフ監督によって映画化されている。主演はジョン・マルコビッチ。著者のミシェル・トゥルニエは1924年パリの生まれで、処女作『フライデーあるいは太平洋の冥界』でアカデミー・フランセーズ賞を受賞。2作目であるこの作品では、1970年度のゴンクール賞を獲得した。
彼の掲げる大きなテーマの1つは、哲学的な命題をいかにして「文学化」させるかということだが、この作品でも、学友ネストール、盲目の老ヘラジカ、伝書鳩、国家政治学校の少年たち、キリストなどさまざまな「しるし」から現実の中に隠された真実を読み取っていくことができる。最後のシーンは、崇高で神話的でさえある。(石井和人)