Harmonium
価格: ¥2,127
2枚目のアルバムは危険な賭けだった。早い時期に分岐点に立ってしまったまだ見た目にもフレッシュなアーティストたちは、それまでうまくいっていたやり方を繰り返すか思い切って地図のない領域に踏み出すかという選択を迫られていることに気づく。ヴァネッサ・カールトンは自分の力量の幅を試してみることを選んだが、作品は野心的な傑作ではあっても、いつも2002年の『ビー・ノット・ノーバディ』(原題『Be Not Nobody』)に続く成功を収めるというわけにはいかなかった。ボーイフレンドのスティーヴン・ジェンキンス(サード・アイ・ブラインドのフロントマンで、このアルバムをプロデュースすると同時にライター、ミュージシャンとしても協力)とのコラボレートで、カールトンは10曲を通じて新しいテーマと音響構造を開拓した。中でも、「White Houses」(邦題「ホワイト・ハウセズ」)(フリートウッド・マックのリンジー・バッキンガムをフィーチャー)や自信にあふれた激しい「Private Radio」(邦題「プライヴェート・ラジオ」)のような曲は見事に成功している。最終的に勝利を収めたのは「San Francisco」(邦題「サンフランシスコ」)の素朴さだ(「ミッションでコーヒーを飲みながらおしゃべり/それがわたしのユートピア」と彼女は夢中で言う。「スタインベックと口笛を吹く男たち」のところはよくわからないが)。だが、エレガントなアレンジとカールトンこだわりのピアノのラインも、特に耳に残るメロディーがない点をカバーしきれてはいない。たしかにカールトンは成熟しつつあり、『Harmonium』(邦題『ハーモニウム』)は彼女を目標へと近づけている。だが、彼女はまだその途上にいるのである。(Steven Stolder, Amazon.com)