デカルト哲学の「考え方」一覧
★★★★☆
この本は、四部構成の原著(予定は六部だが未完)の内、一部と二部の翻訳です。題名は哲学原理ですが、趣旨は、今日風に言えば、”総合自然科学の原理”的なものだそうです。
第一部と第二部の表題は「人間認識の諸原理について」と「物質的事物の諸原理」で、そこには、デカルト哲学の基本的考え方のまとめが述べられています。もちろん、その考え方の根拠をもう少し知るには、別途(例えば「省察」など)を読む必要がありますが、デカルト哲学の「考え方」一覧風に読むと便利だと思いました。
感想ですが、この本は自然科学の本にもかかわらず、冒頭で哲学的認識論が述べられていることに、かえって新鮮な驚きを覚えました。というのは、現代では、自然科学を勉強する人は、そのよって立つところの哲学的思考はマスターされているという前提に立っていることの危うさを反省したからです。
自然科学哲学の原点
★★★☆☆
17世紀に書かれた本なので内容的には古くさいところも多いですが、頭の体操として読むのにはなかなか面白かったです。
文庫版では第一部「人間認識の諸原理について」(哲学)と第二部「物質的事物の諸原理について」(自然科学)の2部を読むことができます。
哲学書として読むとまた味わいが異なるのかもしれませんが、私は自然科学者としての立場から本書を読んだので、自然科学書としての含蓄の深さに感銘を受けました。
いたるところに近代科学の根幹を成す考え方が提示してあり、デカルトの哲学原理に従って自然科学が発展してきたことがよく分かります。
科学の原点を示している点で、本書は科学者としての脳みそをリフレッシュさせる効果もあるかもしれません。
また哲学書にしては難解な記述が少なくストレートな論を展開しているので、誰にでも読みやすい本だろうと思います。
どうぞ気軽に読んでみてください。
思惟
★★★☆☆
二部構成で「第一部人間認識の諸原理について」「第二部物質的事物の諸原理について」となっています。
「第一部人間認識の諸原理について」方法的懐疑−この懐疑には条件が付されていることを知りませんでしたので、それが私のこの本における発見であったように思います。はじめのところで、
三、(しかしこの疑いは、ただ真理の観想にかぎらねばならない)
とあります。そして、神の予定調和的な言説も四〇、(一切が神によって予定されることも確かである)と、中世時代の神の存在自体はあまり激変したというものでもなく、そのまま引き続き受け継がれているように感じました。
けれども、人間の自由意志と神の予定との結合が問題提起されます。これは、近代以降の考え方が以前と比較して大きく変容する原因を考えるうえでも重要なことであると思います。
七五、で「神の概念のもとで…」と制約を掲げていますが、それ以上に注目すべきは物質の感覚・知覚(延長的・可分的・可動的・苦痛・色・味等)が明瞭に浮上し語られたことにあると考えられます。
それは「第二部物質的事物の諸原理について」の
四、(物体の本性は重さ、堅さ、、色等のうちではなく、ただ延長のうちに成り立つ)
一七、(通常的な用語の空虚は、あらゆる物体を排除するわけではない)
に顕著に現れているように受け取りました。
感覚ー物質という一連の知覚、これが近代以降問題視され、繰り返し論争を呼んでいるものだと考えると、この『哲学原理』は、私にとって問題意識を明示化するよいものであったと考えています。