愛と狂気の詩集
★★★★★
シェイクスピアの書いた詩的なラブレター集です。しかし、この本は心温まる本や恋の素晴らしさを謳った本ではないと思っています。この本は愛を人質にとって相手を脅迫するような、恋愛の狂気をあぶりだしていると思います。美しい言葉に花の中に隠された毒をもった棘。しかし、その恐ろしい棘も含めて、やはり美しいと思わざるを得ない。恋の魔力とは、まさにこれなのでしょう。
あなたが好きだ、あなたは美しい、あなたがいなければ私は死んでしまう、あなたを愛している、あなたに愛されたい。その率直なメッセージを、彼の演劇の台本のような表現で、ひたすら書き続けています。その言葉に込められた異常なまでの愛はとても美しく、そして恐ろしい。
女性だけではなく、美しい男性の恋人へ向けたメッセージもあるので、男女の恋愛の本だと思って買うと、ちょっとびっくりするかもしれません。
キレイな薔薇の花にしか興味の無い人にはオススメできません。
キレイな薔薇の棘こそ味わいたいという人にオススメです。
愛するひとへの言葉の贈り物。
★★★★★
前の前から紹介したいなぁと思っていたこの作品。
シェイクスピアの本はあまり数多く読んだ事はないけれど、私が一番に挙げるならこのソネット集。
小田島雄志の名訳と、山本容子の版画のコラボいい!
どれも素敵な詩過ぎて、ひとつを挙げることができない。
―−‐
「あなたをなにかにたとえるとしたら夏の一日でしょうか?
だがあなたはもっと美しく、もっとおだやかです。
手荒な風が五月の蕾を揺さぶったりして
夏のいのちはあまりにも短くはかないのです。
ときには太陽の眼差しが熱すぎることもある、
ときにはその黄金の顔に雲がかかることもある、
そして偶然、あるいは自然のなりゆきによって、
美しいものはすべてその美しさを奪われていくのです。
だがあなたの永遠の夏は色あせることもなく、
あなたに宿る美しさは失われることもなく、
死神に「死の影を歩む」と言われることもないでしょう。
あなたが永遠の詩の中で「時」と合体しさえすれば。
人々が息をするかぎり、その目が見うるかぎり、
この詩は生きてあなたにいのちを与え続けるでしょう。」
‐−―
なんてロマンティックな詩(うた)なんだろう… 愛する相手への想いが沸み上げる
素敵な詩です 情熱。大好きだ
(岩波文庫・赤の高松雄一氏による訳も、文語体できれいで、とってもロマンチックです)
Shakespeare's sonnets
★★★★☆
これらのソネットに、シェイクスピアのこころの中を透かし見ることができる。愛する人を想う、憎む、見守る、咎める、誉める、けなす…。青年を愛するシェイクスピアは実にたくさんの感情をあわせ持つ。決してきれいな感情だけではない。あふれ出すかのようなたくさんの想いが、定型ソネットの調子にのって響く。この本は、原本の意味との整合性ばかりでなく、そのしらべをも大事に訳し出しているように思われる。また、それぞれのソネットには抽象的でありながら、内面の感情を映し出すかのような絵が添えられている。みるも美しい本である。