しかし、途中のページから飛ばし読みすると、この企画の影のとんでもない事実が読み取れます。
それが100%本当の事かどうかは分かりませんが、助言で参加した「攻殻機動隊SAC2ndGIG」が1stより暗く分かりにくいストーリーになった理由や、2ndGIGのストーリー展開のヒントまで書かれています。
本文でも対談でも、決して持論を曲げない押井氏の強さには驚きます。
押井作品がよく分からなくて、もっと理解したいという方には、一読の価値がありますよ。
戦争ゲーム的な不思議な比喩も、押井氏らしくて、読んでいるうちに面白なと思ってしまいました。
士郎正宗による原作もそうなのだが細部へのこだわり、好奇心が世界を作り上げ圧倒的な情報量を表す。「イノセンス」に関しても一度見ただけでその情報を処理できる人間など存在しはしない。その莫大な情報を処理し、その裏にあるものを解釈するのにはやはりこういう本は最適なのである。
場合によっては作者自身の考えを超えたものを作品が生み出してしまったりもし、その分析を進めるなかで自分自身で得るところも計り知れない。芸術とはかくありなん。
「イノセンス」への言説をまとめて読んでいるようで、お得。
圧巻は後半部。三人が三人とも一筋縄ではいかない論客であり
異種格闘技戦ながら、いや、だからこそ
押井のテーマのようなものがくっきりと浮かび上がって見える。
特に鈴木敏夫については、ともすれば饒舌に流れがちな押井の
言葉を徹底して整理し、定義付けていく。
もちろんそれに押井が反発し、軌道修正を加えていくことによって、
映画についての言及がより明確に落とし込まれていく。
その過程は極めてスリリングであり、この鈴木敏夫という
名プロデューサーの力量をこの点だけでも存分に感じさせられる。