前半は良かったけど…
★★☆☆☆
全体的にこのシリーズの水準は高かったので期待して読んだのですが、正直期待外れでした。
前半(総論は除く)まではわりかし分かりやすくきちんと書かれていたように思えますが、後半はフランス現代思想のでよく批判されているようなオブスキュランティズムを踏襲したのか?というような感じで、「構造主義」の章のラカンの節、そしてその次のメルロ=ポンティの章あたりから雲行きが怪しくなり、ドゥルーズの章あたりに来ると全くちんぷんかんぷんで理解をすっかり諦めました(私の理解力不足かもしれませんが)。
章の間に挟まっているコラムに関しては、他の巻では直前ないし直後の章との関連事項に書いており、立体的に理解できてよかったのですが、この巻のはそのような面ではあまり巧い編集がなされたとは思えませんでした。
悪口ばかり言うのもアレなのでよい点を挙げるとすれば、最初の方の「ベルクソン」や「反省哲学」の章は実によかったですし、「レヴィナス」の章は約40ページという限られたページ数の中でコンパクトに非常に巧くまとまっていてこの巻の中では白眉でしたし、最後の章の「ヴュイユマン/グランジェ」は知られざるフランスの分析哲学を知ることができたという意味では面白かったです。
いずれにせよ、私の中ではフランス現代思想だとかポストモダンに対する嫌悪感をやたら増大させただけで終わった気がします。