料理チャンネル「フード・ネットワーク」で一躍人気者になった若きオリヴァー。そんな彼にとって、料理とは「テーブルを囲んでジャガイモを順々に回しながら、バンをひきちぎり、その指をなめながら、ほろ酔い気分で、大勢の友だちや家族と楽しみながらするもの」、そしてメニューとは「家にいる人たちが本当に食べたいと思っているもの」らしい。
ふつう料理本は見やすくわかりやすいものがいい。だがオリヴァーの流儀はちがう。その手の料理本を見慣れている人が彼のレシピを見たら、きっと文句を言いたくなるにちがいない。なにしろ大部分が話し言葉。おまけに材料も分量もわかりにくい。しかしそこがオリヴァーのレシピのいいところでもある。くだけた話し言葉だからこそ、彼のコメントやヒント、料理手順はわかりやすい。おまけにオリヴァーの料理熱は伝染する。本書のメニューや解説を読んでいると、手早くシンプルな方法でごちそうを作ることの楽しさを夢中でしゃべりまくる親友がすぐ隣にいるような気分になる。
最高の食材など買い込まなくてもいい、とオリヴァーは豪語。新鮮なハーブの信奉者である彼は、自宅でのハーブ栽培と料理への活用法を熱心に教えてくれる。「楽しい朝食」の章は、作るのも後片づけも簡単なメニューばかり。たとえば「一番でっかいテフロン加工のフライパン」にベーコンとマッシュルーム、トマト、ソーセージ、卵を放り込んだだけでできあがりの朝食。残った具もバターつきトースト(昔ながらの二日酔いの特効薬)でぬぐって食べられるというおまけつきだ。また「おやつ代わりの軽食」の章では、ぎゅっと詰まった若いチェリーに丁寧にチリ・ペッパーをまぶしただけのスナックを紹介(残ったものを新鮮なオリーブオイルで和えれば、サラダやパスタの具としてイケるそうだ)。
ほかにもまだまだある。つぶしたチェリートマトにオリーブのかけらをまぜただけのサラダ。レモングラス、ジンジャー、ライムの葉をまぜこんだかぐわしいタイ風チキンスープ。さらに彼のリゾットの基本レシピの応用編として、バジルとミントを添えたシュリンプと豆のリゾット。同様にパンの応用編としてチョコレートのねじりパン。「超カンタン」なデザートとして、バルサミコでマリネにしたイチゴや、麦芽をまぜたミルクボールとアイスクリーム(途方もなく大きな袋に入れてたたきつけて粉々にした麦芽を、上質なアイスクリームにかけただけ)などなど。
さあ、ちょっとワイルドな気分でオリヴァーのレシピに挑戦してみよう。「帆立貝の焼き物とプロシュート、ローストトマトとくだいた白豆添え」のような、わくわくする新感覚レシピがあなたを待っている。(Brad Thomas Parsons, Amazon.co.uk)