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ファルージャ 栄光なき死闘―アメリカ軍兵士たちの20カ月

価格: ¥2,100
カテゴリ: 単行本
ブランド: 早川書房
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圧倒的な迫力 ★★★★★
2010年8月米軍が撤退しましたが、これはイラクの国内組織がまだ整備されていなかった頃の状況です。
ソマリアでもないベトナムでもない中東の市街戦がそこにあります。戦闘シーンだけでなくそこに暮らす人々が何を考えていたのかも知ることが出来ます。
ここで描かれている治安の迷走を見るとイラクの国内体制を崩したことが果たして良かったのか改めて考えさせられます
ゲリラ戦の恐怖と最前線の米兵の苦悩が伝わります ★★★★★
 イラクのまさに「最凶の戦場」で何が起きていた(いる?)のか、本文と、多くを著者自らが撮影したという巻頭の写真が、まず目を引きます。
 軍の上層部の政治的な思惑や、国際関係から生ずる不条理に振り回されながら、いくら大義名分があっても最終的には生き残ってなんぼのはずが、そうした大義に尊い命を落としていく最前線の兵士が、いかに難しいゲリラ戦(国防、或いは民族意識などがあるのでしょうが、米軍から見ればもう武器を手にしてゲーム感覚で襲撃をする地元住民とそれを扇動する人たちとの戦闘)を戦い、少なからぬ有為の若者が悲惨な最期を遂げる描写には胸が痛みます。
 一見淡々として、惨劇をつぶさに伝える描写には敬服するばかりです。訳文にもそうした緊迫感がよく表れ、すばらしいです。迎え撃つアメリカ兵の視点で描いたゲリラ戦記として価値の高い書であろうと感じます。もちろん、イラク人の視点、あるいは中立的な視点の書物が出ないと、本当に理解できない部分はそのままになってしまうのでしょうが。
 あえて惜しい点があるとすれば、部隊の編成表を常に手許においていないと話が混乱する(同じ早川書房から出ている「遥かなる橋(=遠すぎた橋)」や「ブラックホークダウン」に見られるような)点、そして訳者が軍事用語に十分には詳しくないのか、指揮官の職名や用語にところどころ読み替えが必要な部分があるところでしょうか。ただ、いずれにしてもそんなのは微々たる物で内容的な価値を損なうものではありません。
 テロの恐怖が身近にある現代、また、日本がそうした危機と直面しうる時代に、平和=戦争を語らぬことと思い込み、いわゆる「正規戦」の危険すら忘れ、さらに凄惨であろうゲリラ戦について想像もつかない我々日本人が一度は読むべき本だと個人的には思います。
歩兵戦の凄まじさ ★★★★★
これは歩兵・空挺部隊・海兵隊がイラクの市街戦に、読む者が放り込まれたような圧倒的な臨場感がある。狂信的な武装勢力、それを圧倒的な火力で制圧しようとする現地米軍、中央軍と文民と遠く離れた米国政府とのもつれた関係、最後まで一気に読める。最後の章の「結論 真の栄光のために」は高い視点からの総括になっていて、とても参考になる。一読を進める良書である。
今の米軍はエミネムの曲を大音量でかけながら突撃するのか… ★★★★★
 2004年に2回にわたって行われた米軍によるファルージャ攻撃を、まるで『ブラックホークダウン』のような筆致で描いたノンフィクション。戦闘場面の描写はすさまじい。米軍の海兵隊にとって、都市の攻防戦はベトナム戦争におけるフエ以来。道の両側の民家からAKを持った男が現れては海兵隊に銃弾をあびせかけるというのは似たような状況かもしれないが、麻薬でラリッてフラフラと何も持たずに出てきた男が一人一殺で自爆攻撃するというのはファルージャで初めて経験したこと。自爆までするのは確信犯的なジハーディストだったが、多くの男たちは戦闘が始まると「自宅に飛び込むとAK銃を引っ堤げて表に出てきて、近所の一団と一緒になるのだった。軽い皮肉を込めて、海兵隊員はこういった連中をミニットマン(アメリカ独立戦争時の緊急召集兵)と呼んだ」(p.161)という。

どこまで信頼していいのかわからないが、カネがもうからるから導師となり、モスクで若者たちにジハードを説くみたいなジャナビみたいな宗教指導者や、我々は善良な市民であり武装勢力など町にはいないから米軍は出て行けとばかり繰り返す部族長を描く「二つの顔を持つ部族長と導師たち」は、責任感のないイラクの指導者層と重なる。中東において戦闘とは自分の勇気を示すことであって、勝利しか目指さない米軍とはまったく違うという話も面白かった。ファルージャ作戦について武官と文官のどちらかに決定を下す権限があるのかあいまいだったと総括し、任務に明確さが欠けていたと批判する最後の総括はフェア(pp.512-)。