24人もの人格が一人の人間の身体に眠っていて、
必要な時に必要な場所で人格が現われてるなんて、
普通では信じられませんが、たとえ多重人格障害であっても、
ビリーの頭の良さがうかがえ、強く逞しく生きていく様は、
とても魅力的でした。
ノンフィクション好きの私には方には読み応えがあって、
とても面白かったです。
養父・チャーマーのビリーに対する壮絶な虐待、それが原因として起こった「多重人格性障害」、
ビリーを守るために次々に現れる別人格たち、政治家による圧力、最重警備施設での不当な扱い・・・・・。
どれも目を覆いたくなるような事実ばかりである。
しかし、「これでもか」と降りかかる災厄に負けず、良き理解者たちを得て自由を勝ち取っていくビリーの姿には感服した。
本書を読めば分かると思うが(多少、ビリーよりの視点で書かれてあるため、公平とは言えないかもしれないが)、ビリー・ミリガンという人物は、非常に頭が良く、魅力的である。
もし、彼が幼児期に虐待を受けていなければ、輝かしい未来が待っていたのではないかと思うと、残念でならない。
でも彼のお陰で、「多重人格性障害」という病気が認知され、その治療法の研究が進んだのも事実だろう。
彼は「多重人格性障害」に苦しむ他の患者の助けになるようなことをしたわけである。
とても皮肉なことだ。
「エピローグ 悪魔は手を伸ばした……」に、とても印象的なビリーの言葉がある。
「彼(養父・チャーマー)に許すと言います。そうすれば彼の霊は、子供のころの彼を傷つけた誰かを許し、たぶん許しは過去に遡っていき、
未来を変えるでしょう。人間は、お互いに傷つけ合うことをやめなければならないんです」
親による幼児の虐待が社会問題になりつつあるこの国で、また報復に報復を重ねるこの世界で、
少しでも彼の言葉が届いてくれるように祈りたい。
ビリーの強く生きる姿はとても感動的なものだった。
この本を読んでとても良かったと思っている