アンビバレントの奇跡
★★★★★
アニメ写真集である。
宮崎駿が初めて監督を務めたテレビシリーズ『未来少年コナン』から、名場面をセレクト。場面を選び、構成したのは、アニメーター富沢洋子。オープロダクションに在籍し、コナンの作画にも参加した。
アニメ写真集というのは、矛盾してはいる。動いてなんぼの世界をわざわざ止めて、切り取って、本にして鑑賞する。逆に言えば、一枚絵として鑑賞できるだけのクオリティが、テレビアニメのセル画に求められてしまう、ということである。これは酷な注文だ。
にもかかわらず、この本は、みごとなものに仕上がっている。
アニメーターの感性で選ばれ、編集され、配置された「画」の断片が、「絵」となり、流れを作り、物語を生み出し始める。脳裏に浮かぶその物語はアニメのフィルムをも超える、かも知れない。
ちなみに、宮崎駿は、作画監督の大塚康生が描くラナに満足できず、ある時期以降は全カットに自分で手を入れたという。執念ですなあ。