必ずしも、女工の悲惨さだけに焦点があてられているわけではない。病に倒れた者もいるが、糸ひきを楽しみ実績をあげ、実家の農村に多額の給料を持ち帰った者もいる。織物は当時の主力輸出産業で、後発国日本が国際社会で渡り合うための富をもたらす基盤になったのは、そうした人々の力であった。
豊富な記録に基づく本書は、日々の生活のためにたくましく働いていた無数の庶民の営みの尊さを伝えるものであるように思える。