クライマックス!
★★★★★
1〜7巻はすべてこの8巻のための序章だったと言えます。
最後までドキドキが止まらず、一気に読んでしまいました。
坂の上の『雲』とは何だろう?
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司馬作品は好きだが、本作は、歴史上の人物としてはマイナーな秋山兄弟、個人的に興味のない正岡子規が主人公と言われるので、
避けてきた。40歳を超え、いい大人のくせに、現代の日本への分岐点だった日露戦争についてなにも知らないことを恥ずかしく思い、
ひと月かけて読んだ。読んでみると、ほとんど日露戦争戦記のようで、秋山兄弟や子規は一登場人物にすぎない。
欧米列強に追いつくべく、坂の上に駆け上ろうとした、明治日本の日本人の気概が描かれている。
世代的には祖父のそのまた祖父くらいだが、当時の日本人の純粋さ、勇気、国家への強い思いを強烈に感じることができる。
一般国民でさえ、ロシアの脅威から日本を防衛すべく主戦論を唱え、重税に耐えていたあの時代。
この作品の素晴らしいところは、単に日本万歳とか、戦争反対とかではなく、読み手に日本人としての誇りを思い起こさせ、
自分たちはこれからどう歴史を作っていくのかを考えさせられるところにある。
海軍参謀秋山真之は、精神を病むほどに作戦を考え勝利に導いたが、浮かれるところは全くなく、敵や味方の死を
目の当たりにし、戦後は僧になると言い張り、実際に息子を僧にしている。しかし、軍部、国全体は勝利に浮かれ、日本は強いと
勘違いし、太平洋戦争に突入していく。
題名『坂の上の雲』にはどういう意図があるのか?
雲をつかもうと坂を上ったが、上ってみると雲はさらに手の届かないところにあった。つまり、近代国家をめざして日露戦争に勝ったけれど、
その後どうしていいか日本人には分からなかった。そして、その雲が、大雨を降らすことになる。
司馬さんが、次代の歴史をつくる我々に対して、しっかり考えよ、と言ってるように思えてならない。
大変勉強になりました。
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どうも日本史、さらに近代史はとんと弱くって大学受験も世界史だったのでこの時代の天下国家など語れませんでしたが、昨年のNHK大河ドラマの影響をモロに受けて読み始めました。ようやく最終8巻目に至り、作者の壮大な近代日本史の叙事詩的な全景を知るにあたって、圧倒的なその取材能力に感激を受けた。TVが今年末、来年末とどういう展開をしていくのか楽しみではあるが、秋山兄弟が主人公のような話では決してなく、兄弟を通して作者が知りえた歴史事実を克明に書いている大作だったんですね。続いて「竜馬がゆく」8巻も読み始めましたが、司馬史観を堪能しております。人生で読んで良かったと思った最良の小説。
勝利の後には、正しい《自己規律》です。
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司馬遼太郎氏の傑作歴史小説『坂の上の雲』の、最終巻です。日本は、日本海海戦における奇跡のような《バルチック艦隊殱滅》に成功して、日露戦争は、日本の《戦略的》勝利に終わります。その後、アメリカの仲介による《ポーツマス講和条約》によって、この戦争は幕を閉じます。しかし、この日露戦争の戦略的勝利の後には、まるで迷信のような《日本不敗神話》が生まれ、その後、日本は歴史の道を踏み外すことになります。この辺りは、バブル全盛当時の《日本経済不敗神話》を、東京の片隅でバイト生活を送っていた私としては、連想してしまいます。奇跡的な勝利が、却って人間の《合理性》や《計画性》を失わせ、それが最後には、新たなる崩壊に繋がって行くことは、何とも言えず不思議なものです。実名は出しませんが、今の日本経済全体や、新進実業家の不祥事などを見ていると、思わず《歴史は繰り返す》という言葉が真実であることを痛感してしまいます。どんな勝利であっても、勝利の後に正しい《自己規律》を作れるかどうかが、長期的な勝利には欠かせないということなのでしょう。全8巻に及ぶ、超大作を通読するのは少し疲れましたが、いずれにしても学ぶ所の多い《傑作歴史小説》だと思います。
「日本人」として
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一巻から始まる大長編傑作
日本史では日本海海戦勝利、日露講和へと短い内容ですが、日清戦争から続く戦略があったことが分かります
日露戦争勝利時に秋山真之が起草したと言われる艦隊解散文には「古人いわく勝って兜の緒を締めよ」と勝利に湧き上がる軍を戒め戦争は終結します
この作品は他国ではないわが日本の話。その後の日本についてはご存知の通りですが、自分の国について考察するには必読の作品いや「日本人」として必読しなければならない作品だと思います