インターネットデパート - 取扱い商品数1000万点以上の通販サイト。送料無料商品も多数あります。

帝国陸軍の栄光と転落 (文春新書)

価格: ¥819
カテゴリ: 新書
ブランド: 文藝春秋
Amazon.co.jpで確認
別宮版帝国陸軍史 ★★★★☆

著者別宮さんのこれまでの著作や主宰HP「第1次世界大戦」に親しんで来た者には、日露戦争陸戦の再分析、昭和陸軍の陥穽、国際法上の「侵略」から見た支那事変の評価、など馴染みのことが多く、新知見は少ないですが、読みやすい、コンパクトな「別宮版帝国陸軍史」としてお薦めします。
帝国陸軍の栄光を知るべし ★★★★★
帝国陸軍は強かった。奉天では自軍をはるかに上回る多勢のロシア軍を攻めて勝利した。自国領より遠征して堂々の会戦での勝利だ。世界史に特記されるべき日本海会戦にも匹敵、或いは凌駕する栄光である。この栄光がしっかり描かれているのが本書の特筆すべき点だ。無論、栄光の陰にあった失敗の萌芽にも触れられている。ドイツより招いたメッケル個人の資質に関する問題点だ。だが、将来への不安とともに語られるその栄光は更にその輝きをます。

昭和の陸軍を語るにこの「栄光」を欠かす事は出来ない。著者は今まで評判の芳しくなかった山縣有朋を再評価、彼を藩閥と呼び逆に自分たちが人事抗争に明け暮れた昭和軍部の問題点に言及する。彼らは来るべき戦争に対応しようとして「国家総動員体制」を構想、実行する。が、これは計画経済なのだ。日本にも計画経済が実行された時代があったのだ。正に目から鱗だ。

そして、官僚に管理された経済において日本経済がどうなったのかとの分析に進む。一例として、日米開戦当初、優位を誇っていた航空機材が序々に米軍のそれに圧倒されてゆく様を上げられている。何故なのか。読者は本書の出した結論に同意できるだろうか。
明快な説明もあれば、わかりにくい箇所もある。 ★★★★☆
本書は帝国陸軍の通史で、1.陸軍の師団制は今に至る東京一極集中の一因、2.参謀本部の机上の作戦計画は空振りばかりで、日清・日露戦争の陸軍の勝利は現地司令官の独断専行による、3.日本は余力があったのにロシアの宣伝に惑わされた、4.山縣有朋は陸軍のドンだったが、公平な人事を心がけていた、5.人事抗争に明け暮れるようになったのは昭和になってからで、統帥権独立は軍部外からの人事への介入を防ぐ目的があり、吉野作造が明治憲法に欠陥があるかのように述べたことが軍にヒントを与えた、6.統制経済とはエリート主導で無謬が前提の社会主義計画経済で、日本のそれはドイツ以上に徹底して民間の活力を削ぎ、昭和11年までの高度経済成長が翌年から失速した、7.支那事変(本書での表記)は蒋介石がしかけた戦争で、陸軍は停戦申し出を受け入れようとしたが、文民政府と海軍の反対に押し切られた等、初めて知ったことは多い。

異論を聞きたい部分(例えば統制経済推進派の永田鉄山を名将とした本がある)や、より詳しい説明が欲しい部分がある。師団制採用と東京一極集中は論理的に結びつくのか、紙幅の関係もあろうが、旅順要塞攻防に触れなくていいのか等。

戦前の共産主義者弾圧のイメージが強かったので、統制経済=社会主義とは目から鱗。社会主義の失敗例が日本にもあったのだ。
陸軍の人事抗争を追い、社会主義的軍人が国を巻き込んで滅んだ100年を追う。 ★★★★★
 日本は何故無謀な戦争に突入したのか。それは海軍の暴走によるものである。では帝国陸軍は何故それを止めなかったのか。陸軍は官僚として人事抗争に明け暮れ、日本の将来など気にもかけていなかったのである。

 著者は明治初期の陸軍創設から日清・日露戦争を経て第2次大戦までの陸軍組織の歩みを追い、大正・昭和期の陸軍を陸軍官僚組織としての腐敗と怠惰の観点から記述する。

 明治初期に導入した参謀制度は大局観を持つこともなく、現地司令官に勝手な命令を出す組織になっていく。日露戦争後の日本陸軍は完全に官僚組織化し、ドイツ流社会主義に染まり、さらに他省庁の若手革新官僚と図り国政を自由に操った。日露戦争に従軍した世代がいなくなると、平和を追求するどころか、不要な軍備を拡張し、クーデーターを起こし、大企業に天下り、統制経済を強いた。

 軍事や戦前の事を語ると右翼とレッテルを貼るマスコミが多いが、昭和陸軍は明らかに社会主義的であった。また、それを嫌う民衆による民主主義も作用していた。戦後、軍は解体されたが他の省庁では戦前の軍と同じことをまだ続けている。

 国家官僚は大局観を持って国民の自由と安全を守るべきとの信念から独自の陸軍史を世に問うた別宮氏に敬意を表したい。
わかりにくい陸軍 ★★★★☆
帝国陸軍の盛衰はわかりにくい。
とくに2.26事件のあたりでは、本書も明快さが今ひとつという感じがある。
「どこの国の軍人が、財閥の横暴や農村の疲弊といった抽象的な題目で、自分たちの理想とせねばならない戦争ヒーローを殺傷するのか」と、これは渡辺錠太郎教育総監と鈴木貫太郎侍従長についてのものである。

彼らは天皇機関説を排撃する軍人テロリストに殺傷されたことは種々の著書に明らかである。
本書ではそこがまったく解説されていない。これではやはり帝国陸軍の盛衰の真実を語っているというわけにはいかないのではないか。
統帥権干犯論や天皇機関説排撃は学者によっては国粋主義的な「合法無血クーデター」とか「憲法改正」とまで定義されている。本当に軍関係者が何を目指してこんなことをしたのか、これが語られなければこのタイトルが泣くだろう。