訳文はまったくの翻訳調で、主人公のマーロウはじめ、みな古い吹き替えドラマみたいなものの言い方をする。肝心の筋書きも、主人公の行くところ少しずつ順調にヒントが転がっていて、まことに直線的な運びである。よく言えば無駄がない。しかし、「世の中そんなにうまくいくものか」という気がする。
作りものの(そりゃそうだ)探偵小説としては、きっとよくできち?いるのだろう。しかし、リアリティーに欠ける。論理性も甘い。こういう独特の西洋的雰囲気がたまらない、という人にはきっと魅力あふれる作品なんだろうけれど、どうも私には縁遠いようだ。残念ながら。