読みやすい正史版三国志
★★★☆☆
正史の三国志を訳したもの。形式としては、徳間書店の中国歴史を扱ったハードカバーに多く見られる、原文、書き下し文、現代語訳の形。それに独自の解説が付属する場合もある。
完訳ではなく正史のダイジェスト版といった趣で、1と2は魏を扱った内容となってはいるものの、例えばちくま学芸文庫の正史にはある皇后たちの伝は全て綺麗にカットされている。
この一巻に収録されているのは、曹操、曹丕、曹叡、それに董卓、袁紹、袁術、劉表、呂布、公孫サンだけである。
従ってダイジェストではなく本格的に正史の三国志を読みたい人には向かず、そうした場合はちくま学芸文庫から出版されている正史三国志の方がお勧め。
ただ、(私が持っている)ちくま学芸文庫の三国志は細かい文字がみっちりと並び、人物名も地名も一気に出てくるので、中国古典に馴染みのない人には少々読みづらいかもしれない。
三国志を扱った諸作品(小説、映画、漫画、ゲームなど)で三国志に興味を持ち、これから色々と調べてみたいと考えている人には、こちらの方が読みやすいだろうとは思う。好みの差はあろうが、こちらの三国志の訳はあまり難しい語彙は使用せず、現代語訳が馴染みやすい文章で書かれているのが魅力だ。
内容としては充分に魅力的で読み応えもあるのだが、やはり削られてしまった人たちの伝も読みたかったということで、星の評価は三つとした。正史三国志の入門書として読むには向いている。