CBTの基礎に信頼関係
★★★★★
重度の強迫性障害を乗り越えていく物語。
強迫性障害の実態が非常に生き生きと描かれていると思う。臨床家を目指す者はこういった類のドキュメンタリーを数多く読んで,患者や家族の経験を追体験する必要があると思う。本書はそのための非常に優れた教材だと感じた。
結局患者本人がCBTの技法である曝露反応妨害法を自分で実践して強迫性障害を乗り越えていくのだが,その基礎にはセラピストとの強い信頼関係があった。やはり非特異的な治療因子としてのラポール形成は,特に重傷の障害ほど重要になるように思う。適切な社会的関係を反映することこそ,治療にとって大切だと痛感させられた。その点,シュヴィング『精神病者の魂への道』(みすず書房)と共通するものを感じた。