「第三の道の政治か目指すところを一言で要約すれば、グローバリゼーション、個人生活の変貌、自然と人間との関わり等々、私たちが直面する大きな変化の中で、市民一人ひとりが自ら道を切りひらいていく試みを支援することに他ならない」と基本は至極シンプルで、方向性は「社会民主主義をめぐる論争が本格的な脱国境化を遂げること」。だが、そのプロセスである「第三の道へのプログラム」各論は難解だ。プログラムとは、
「民主主義はあまねく普及し、民主主義国家同士が交戦することはないとの仮説が信憑性を帯びてきた」(232ページ)との言葉に代表されるように、ギデンズ先生は全体に楽観的で民主主義過信ぶりが目につく。たとえば “民主的家族” 。家族政策の重要性を前置きしたうえで「民主化された家族もまた一つの理想像である」と難解なことを言ってのけ「親の権威の何たるかは、親子の話し合いによって定まるのであって、最初から決まった定型があるわけではない」と脳天を一撃してくれる。もっともこの前提には『親密性の変容』(原題『The Transformation of Intimacy』)という興味深い著作があるので、興味ある向きにはこちらもおすすめ。
世界各国で翻訳された本書には多くの批評が寄せられ、著者はすでに本書に対する批判に答えた『The Third Way and its Critics』を上梓している。併読すれば、より理解が深まるだろう。少なくとも民主党をはじめめとする政党の政策理解に役立つはず。政治、経済、社会学を学ぶ上でおさえておきたいテキストだけに、ノンブルが本のとじめの部分にあるのがいただけない。(松浦恭子)