すごい作家の登場ですよ。
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子どもを人間に殺された母トラが村を襲うようになります。占い師の予言に従って、幼い王子をトラに差し出すことに・・・。
そのあまりの幼さと無邪気さに、母トラはいつしか王子を育て始めます。
まるで神話のような物語を紡ぎ出す作者。そしてその描く墨絵もまた奥深く重厚でありつつ、母トラの優しい目が心を打ちます。
画面構成も色々な工夫がなされていて楽しいです。
すごい作家の登場ですよ。(ひこ・田中)
愛は憎しみに勝る
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中国には、トラが人間の赤ちゃんを育てたという伝説があるそうだ。
その伝説をもとにしたと思われる青銅器がパリの美術館にあり、
それらが引き金となって、この絵本が生まれたとのことだ。(巻末の作者による解説)
表紙に描かれた男の子をくわえるトラの姿は、確かに青銅器の意匠と瓜二つですね。
さて、この話しはトラを巨大なゴリラに、男の子を美女に置き換えると何かに似てくる。
「キングコング」だ。人間たちの村をおそう凶暴な獣を沈めるため、生け贄を差し出す。
しかし、その生け贄と獣の間でいつしか心が通じ合うという展開が共通しているのだ。
キング〜が男女の恋愛を彷彿させる関係だったのに対し、本作では親子関係を
描いているところが特徴といえます。
トラはあくまでも実在するトラとして描かれています。安易に人間の言葉を
発したりせずに行動のみで男の子への想いを示します。
そんなところに伝説的な話しでありながらも、リアリティを感じました。
この関係はどのような結末をむかえるのか?
悲劇的な別れとなったキング〜に対し、愛や信頼が世代を超えて受け継がれる
可能性を示したところが印象的でした。
今の世の中、命を奪い合う親子関係が増え続けているだけに、
考えさせるものが多くある作品と言えるでしょう。
中国の伝統的水墨画の技法を駆使した大画面一杯にひろがる迫力も見どころ。
涙が出ます。
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なんとなく、動物好きの息子のためにトラの本か〜程度で、読んでみると、私が感動して涙が出ました。結局、何のことはないお話なのですが、挿絵の迫力に想像が果てしなく広がり、登場人物の一人ひとり(一匹)の気持ちになってしまいます。5歳からと帯に書いてありましたが、きちんと理解できるのは、もっと大きくなって方だと思います。本当にいい本だと思います。 ドイツの児童図書賞受賞作品です。