インターネットデパート - 取扱い商品数1000万点以上の通販サイト。送料無料商品も多数あります。

The Invisible Heart: An Economic Romance

価格: ¥1,935
カテゴリ: ペーパーバック
ブランド: The MIT Press
Amazon.co.jpで確認
   本書の主役は、政府の介入をできる限り排除する資本主義市場が良き結果をもたらすと確信する若い高校教師サムと、温情主義的福祉政策や企業の慈善事業への寄付などが好ましいと考えるサムの同僚の女性教師ローラの2人。資本主義市場と選択の自由尊重のサムは経済学では新古典派的立場であり、温情主義的な政策介入を必要とするというローラの立場は、福祉の分野では福祉国家論であり、経済政策の分野ではケインズ派になる。そのほか温情主義的な政策を批判するサムを誤解する高校関係の有力者やローラの兄、それに政府立場を代表する人物も登場し、おもしろく読ませながらそれぞれの立場と経済学のホットな論議を理解させる新型の「小説」である。題名の「インビジブル・ハート」は、アダム・スミスの「神のインビジブル・ハンド」をもじったものであり、人々の利己的行動が、社会的に好ましい結果をもたらす市場メカニズムを示す。題名からも示唆されるように、最後に全く考えの違う2人のハートが交流し、それぞれの立場を理解するにいたるという筋である。

   しかし、どちらかといえば自由市場論に対する世間の誤解を解き、政府の規制を排し選択の自由と市場による経済秩序のほうが好ましい結果になることを理解させようとする立場の本である。ミルトン・フリードマン夫妻の「選択の自由」がサムの立場に近いが、本書はより日常的言葉で選択の自由と市場重視がなぜ好ましい結果をもたらすかを、わかりやすい事例を通じて理解させる。

   しかし、実は、経済問題は自由な市場が良いか政府の計画的介入が良いかは一概には言えない。領域によって異なるからである。たとえば医療や福祉の問題でも生存や安全にかかわる領域は公正と連帯を目的として計画原理で保障し、その他の領域では市場原理で効率を追求にする。こうしたシステムの組合せによって複数の目的を同時に達成できるという福祉ミックス論の立場もある。(丸尾直美)