危機がマヌケによって、どう引き起こされ、戦争に至るのかを知る。
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オムニバス的にキューバ、ホワイトハウス、ソ連や周辺において起こる軍事的状況を、『24』さながらに日付・時間で章立てて、しかも今まで明らかにされなかったり、間違って書かれてきた事柄を、緻密な取材によって修正した、初めて全体的に書かれた書。
1962年10月27日のブラックサタデーに起こった、米U2機の誤飛行によるソ連領空侵犯事件をはじめとして、今になって初めて書かれるエピソードは、興味深いが、研究書のように堅苦しい読み物とはなっておらず、小説仕立てになっているのもあって、上等な読み物としても楽しめる。
しかしボリュームには苦戦した。
結果的にJFKが勝者となり、フルシチョフにも切られた形のカストロが1番の敗者となるのだが、戦争が、自己管理や自制の必要性を知る国の指導者(ビッグマン)でなく、不安やプライドに振り回される配下の者(リトルマン)によって引き起こされるとの、ジャクリーンがJFK死後にフルシチョフに送った私信を、読後に読者は噛みしめる事になろう。
誰も知らなかったキューバ危機の真実
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本文587ページ、あとがき&謝辞でプラス30ページ、注釈と索引で40ページ、更に未公開物を
含む写真が20ページ……と重量級の一冊。
しかし、それに見合ったものを提供してくれる一冊でもあります。キューバ危機の通説
(例:10/24に米軍艦艇とソ連艦艇がカリブ海でにらみ合っていた、という話。資料を紐解いて
いくと、実際には起きていなかった)を、著者自身が情報公開を請求し今回明らかになった
事実や、また当事者へのインタビューを元に、それが事実でなかったことを証明しています。
・フルシチョフは当初から10/23時点で、アメリカと事を構える気はなかった。
・ケネディもその気は無かったが、かと言ってどう対応するかにも悩んでいた。
・そうこうする内に、情報の伝達が遅れた為(酷い時には半日遅れていた)、双方相手の意図が
読めなくなった。
・その為、何も出来ず。それがまた、次の予定外の事態を引き起こしてしまう、という悪循環に。
・米軍とソ連軍の詳細な動き。
・ケネディとフルシチョフは核戦争を避けた方が、カストロは国より尊厳を優先していたので
何かあれば発射することをフルシチョフに求めた。
・何も出来ない間に起きた、やっかいなことの詳細。
(U2偵察機がキューバ上空で撃墜され、また同じころにソ連領空へ侵入していた)
・ケネディとフルシチョフがどうやってこの事態を手仕舞ったのか?
(結果的にアメリカはトルコと言うカード、ソ連はキューバと言うカードを切った形に)
……といったことを時系列順に構成。且つ、それぞれの立場で成したこと、成さなかった
ことを描いた、言わば人間ドラマとして編み上げています。
表題の通り、第2次世界大戦後、世界が核戦争に最も近づいたとき、当事者間では何が起きて
いたのか?を知ることが出来る一冊です。興味がある方の期待は裏切らないと思います。