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2次元より平らな世界―ヴィッキー・ライン嬢の幾何学世界遍歴

価格: ¥2,520
カテゴリ: 単行本
ブランド: 早川書房
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   ビクトリア朝時代のイギリスで『2次元の世界』という本が出版された。その本は今日なおイギリスをはじめ世界各地で読み継がれている。  そして、一般向けの数学書のジャンルでは当代きっての書き手であるイアン・スチュアートが、この本とその著者であるE・アボットにほれ込んで自ら書き上げた続編が、本書『2次元より平らな世界』なのである。

   主人公のヴィッキー・ラインは厚みのない平面世界に住む女の子。この世界では、女性は1次元の線分であり、多角形の男性よりも、下等な存在として扱われている。

   そのヴィッキーがある日、ひいひいお祖父さんの残した手記を見つけた。それによれば、A・スクエアお祖父さんは2次元の住人には想像もできない、球形をした3次元からの使者スフィアに導かれて高次元の秘密をかいま見、それを2次元世界に広めようとして異端者扱いされ、投獄されたらしい。

   好奇心をそそられたヴィッキーは、次元を自在に飛び超える能力を持つ不思議な生物、スペースホッパーを呼び出すことに成功する。かくしてヴィッキーは、奇妙な数学的宇宙(マセバース)を巡ることになるのだ。

   自転車乗りに遭遇し「次元」を、ビストロでワインを飲みながら「射影幾何学」を、巨大なディナー皿のような双曲の国で「ユークリッド幾何学」を…スペースホッパーの明快な解説で、次々と理解していく。

 「ありえない」のに筋は通っている幾何学世界の摩訶不思議。高度な数学的・幾何学世界の魅力が楽しく語られているので、物語を読むようにのめり込むことができるだろう。

   幾何学の最新知識を学ぶのと同時に、ビクトリア朝イギリスの社会構造を風刺した、社会改革者アボットのいら立ちの叫びに耳を傾けられる、知的魅力あふれる1冊である。(冴木なお)