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どうせ、あちらへは手ぶらで行く―「そうか、もう君はいないのか」日録

価格: ¥1,260
カテゴリ: 単行本
ブランド: 新潮社
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リアルな裏側 ★★★★★
本書は同氏が肺炎で亡くなる100日前までに、手帳に残した71歳から79歳までの

メモからなる。書き込みは月に二度、あるいは多くて七度あたりである。

したがって、読む側からすると、ちょうど高齢者には時間の流れが早く感じるという

その早さに、自分が同期してしまっているというリアルな感覚を覚える。

言い換えれば、人生は長いようで短い、という感覚がストレートに伝わってくる。

全体的には、72歳で良き伴侶をガンで失った寂寥感が通奏低音のように流れる中、

なかなか活動的でもある。旅行を好み、赤ワインを飲み、財界人とのゴルフを楽しむ。

よく歩くことを心がけ、体重の増減に一喜一憂する。

そうした中で、著作活動も続けるが、74歳あたりから、物忘れが激しくなる。

晩年は、「眼前これ人生、眼前のみこれ人生、であれば目先のことしか考えぬように

しよう、目先のことだけ楽しんで生きよう」と自分に言い聞かすようなメモも増えていく。

これは亡くなる前年のメモに頻出する。最後のメモは「一回限りの人生、とにかく

楽しく気ままに楽に生きること!」でこの日録は終わる。

人は自分の死を論評することは出来ない。しかし第三者からすると、最後のメモに

書かれたことにほぼ近い人生を同氏は送られたように思う。

なによりも、伴侶亡き後、子供たちの同氏へのフォローが、それを全うさせたと

感じられる。多くの人に推薦したい。