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人びとのかたち (新潮文庫)

価格: ¥3,097
カテゴリ: 文庫
ブランド: 新潮社
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塩野流社会・恋愛論 ★★★★☆
現在刊行中の「ローマ人の物語」等の作品で有名なローマ史研究の第1人者の著者の映画論。塩野女史と映画とは正直言って結び付かなかったが、エッセイを買い込むうちに紛れ込んだようだ。

読んで最初に思ったのは、塩野女史が良家の子女として育ったんだなぁという詰まらない事だったが、次第に映画の論評を通じて、女史の社会観を述べる書にしている事に気付いた。そう思って読むと、取り上げる映画が(女史の年齢にもよるが)古き良き時代のアメリカ及びヨーロッパのものに偏っている事に気付く。スターに対する見方も恋愛観もオーソドックスなものである。女史を現代における日本の代表的知識人と思っていた私には、保守的過ぎて少しガッカリした。特に、レトリックとは言え、「ダスティン・ホフマンとジャック・ニコルソンとロバート・デ・ニーロの三人がアメリカ映画をダメにした」と書かれると反発せざるを得ない。

最後に私事になるが、本書で「月の輝く夜に」が取り上げられている。同映画は、結婚前に家内を最初に誘った映画なのである。これに対し著者は「女に対して常に成功を収める男の武器は、ただただ言葉の使いようにある」と言っているが、言葉は拙くとも心が美しい男は幾らでもいる。著者の保守性と共に偏狭性を感じた。




映画の観方、ものの見方 ★★★★☆
塩野七生さんが、映画を題材に語った47の"エセー"。
ところで、
私はここに取り上げられた映画を、ひとつも観たことがない。

それでもこの本は繰り返し読んだし、
これからも読むだろうと思う。
映画そのものがどんなものであったかよりも、
そこに何を観、そこから何を引き出したか。
その視点が何より面白いと思った。

映画そのものを観たことがある人ならば、
より面白く読めるかもしれない。
映画を通して人を観る ★★★★★
歴史ものだけでなくエッセイでも優れたものを書く塩野さん。
私も映画好きなので、これは特に興味深い内容が多かったです。
それにしても相変わらず独自の視点ではっとさせられる文章が多い。
所謂今の映画産業に関わる人達では絶対に書けないこと(というより、書いてはいけないこと?)まで率直に書かれているのが素晴らしい。
印象に残る文章を枚挙するとキリがないが、私が特に感銘を受けたのは「人間嫌い」の項。
塩野さんの文章を読んでよく思うのは、世間ではこう言われているし、表立ってそうじゃないという人はなぜかあまりいないけど、
ほんとにそうかなあ?と私が疑問に思っているような事柄に対して鋭くしかもある種官能的な視点や文章で答えを表現してくれること。
このエッセイでは、演技派を主役に据えて重い話を生真面目に造るとアカデミー賞が取れる傾向にあるハリウッドのあり方に疑問と限界を感じていた私としては、この本を読んで胸のつかえが取れたと感じたほど。
一方で、好きな役者については結構ミーハーなところも微笑ましい。
ぜひ最近の映画についての本も一冊読んでみたいところです。
塩野七生の映画論 ★★★★★
この本は映画論ということになっているが 要は 映画を題材とした「人間」の話である。題材は映画の主人公であったり 俳優であったり 監督であったりと 自由自在である。それを材料として 塩野七生の洒脱でユーモアの効いた文章が緩やかに流れ 陶然としてやまない。それでも 彼女の醒めた視線は随所に感じる。「天命を知るとは 自分の限界を知ることです」という最後の一文は さらりとこの本を閉じるために置かれているが それにしても甘く 苦く 重い一文である。
独特な視点の映画評 ★★★★★
映画評と言うよりも、映画をネタにして人間のあり方を考えるエッセイと言う方が適切かもしれない。いずれにせよ、人間洞察に優れる塩野さんならではの、独特の視点がおもしろい。見ていない映画は(好みのジャンルでなくても)ちょっと見てみたくなるし、すでに見た映画も、なるほどそういう見方もあるのか…ともう1度見てみたくなる。

エッセイのテーマ上、人間ドラマ的な映画が多いが、西部劇にコメディ、サスペンス、アクション…といろいろな映画が取り上げられているのが良い。特に、人間のあり方とは縁遠そうな、娯楽映画についてのコメントがおもしろい。

たとえば「白いドレスの女」、悪女に翻弄されて犯罪に走る男を描いたサスペンス物である。ある種の男は、悪女に翻弄されてみたいという願望を持っており、この種の男がいなければ、悪女も悪女になりえないのではないか…という分析にはうならされた。ユリウス・カエサルは、クレオパトラの据え膳はしっかり食いながら、それに溺れる事のない男だった…という「イタリア遺聞」での記述を考え合わせると、なおさら興味深い。

また「ダイ・ハード」については、悪人たちは泥棒にすぎないのだから、主人公はあれほどムキになって戦う必要はなかったのではないか、アメリカ人の正義はがむしゃらだから…と皮肉っている。アメリカの正義が少しズレている事は最近特に顕著だが、映画の内容については塩野さんは勘違いをしている。「ダイ・ハード」の悪人たちは、確かに金目当ての泥棒だが、それをカムフラージュするために大量殺人をもくろんでいたのだから。

私が気がつかないだけで、他にも勘違いしている箇所はあるかもしれない。だが、紹介されている映画を実際に見て、それを見つけるのも一興だろう。