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長州戦争―幕府瓦解への岐路 (中公新書)

価格: ¥861
カテゴリ: 新書
ブランド: 中央公論新社
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相当の努力なしには、読みこなしは困難 ★★★★☆
私の読解力の範囲で本書を要約すれば以下のごとくになる。即ち、既に幕府は英米オランダなどの海外列強の力が日本の戦闘能力を遥かに上回る物であることを知っていたので、勅許を得ずして開国に踏み切った。しかるに、海外列強の力を過小評価した長州が単独で攘夷に踏み切った。孝明天皇は外国人が大嫌いなので、当初は長州の攘夷に理解を示していたが、長州が列強の報復攻撃で完膚なきまでにやっつけられると、宗旨替えして長州はけしからんと言うことになった。ここに、幕府と皇室の意見が一致して、幕府は天皇の許可の下、長州征伐に踏み切るが、銃砲による武力で長州に劣ったために敗北し、幕府の崩壊をはやめたと、マー、こんなところでしょうか。
それにしても、他のレビューでも指摘されているとおり、ある程度の幕末に関する、基礎知識・予備知識なしには読み進めるのには、かなり困難である。
ふんだんに出てくる人名、地名(しかも藩名)を理解せねばならず、豊富に引用されている当時の文献の記述を読みこなさねばならない。分からなければ分からないなりに読み飛ばしてしまうのも一つの方法ではあるが、本書を忠実に読みながら理解して読み進めるには、かなりの時間と努力を要すると思う。
四境戦争自体の記述が思った程多くない ★★★☆☆
四境戦争を、江戸幕府側から見た総括として書かれています。
「しなければ良かった戦争」と結果論から入っているのも、その為です。

本書は桜田門外から四境戦争突入までの、幕府側の政治の動きに重点を置いて
詳細に書かれて、長州側の動きはさらっと触れる程度です。
又、四境戦争自体の記述は1/5位で、かなり物足りません。
それでも他の本より詳細に書かれていると思います。

幕府敗戦の原因も、これまでの多くの本で言われている
幕府側の読みの甘さ、戦意の無さ、兵器が劣っていた事に結論されていますが、
私が知りたかったのは、何故読みが外れたのか?
何故戦意が高揚しなかったのか?幕府歩兵軍の兵器も強力だったのに何故負けたのか?
だったのですが、その回答は見受けられませんでした。
又、目新しい視点等もなく教科書的な結果論の総括になった感じがします。

幕府側から見た長州征伐間での政治の推移を知りたい人には良書と思いますが、
軍事的に何故幕府が負けたのか?四境戦争中の幕軍や長州の動きを知りたい人には物足りないと思います。
その為に★3にしました。


「一会桑政権」という視点を持つと歴史のもつれた糸がほどけるような感じがした ★★★★★
 八月十八日の政変の後に成立した参与会議がわずか2ヵ月で空中分解するという、京都に発生した一瞬の権力の空白期間に、一橋慶喜が会津藩主・松平容保とその実弟である桑名藩主・松平定敬と手を結び《江戸の幕府と京都朝廷との間に介在して独自の政治勢力を形成》したと仮定するのが「一会桑政権」という視点。確かに、明治維新の沸騰期の政治状況は薩長対幕府という図式だけでは説明しにくいところがあります。慶喜は兵庫開港問題で《幕府が一度下した認可をひっくりかえし、もう一方では薩摩藩の勅許拒絶案を潰し、その間を縫って慶喜カラーを押し出》し、天下の嘱望を一身に集めるというという高度な政治力を発揮します(p.141)。つまり一会桑の武力で京都を押さえながら、幕府にも薩摩藩にも失点させ、開港を求める四ヵ国の代表にも貸しをつくって自分のイニシアチブで開港。やがては家茂の死後、将軍に登りつめます。

 しかし、日本史は凄い。こうした動きを横目に薩摩藩は徐々に長州との同盟に傾き、幕府がおっとり刀で二度目の長州征討に向かおうとした瞬間に薩長同盟が成ります。話は先になりますが、薩長vs幕府の権力闘争が最後の決着をみた鳥羽伏見の戦いでも、戦いの帰趨が決まったのは、慶喜と容保と定敬が大阪城から開陽丸で逃げ出したからですもんね。

 高杉晋作好きにとっても関門海峡を挟んでの小倉口の戦闘が丹念に描かれていて楽しめると思います。さらに、それに先立ち、占領した大島に居座った幕府海軍を相手に小型蒸気船で単騎乗り込んで大砲を撃ちまくって逃げるあたりの描写なんかもいいです(p.166)。「六月十六日夜半、丙寅丸を以て癸亥丸及び丙辰丸を引き、田ノ浦港に迫る」という出だしから始まる小倉領への奇襲作戦を報告した晋作の文章は、著者の言うように行間に戦場のポエジーさえ漂わせた美文だと思います。
なぜ徳川幕府は、崩壊したのか? ★★★★★
好著。
ただし、幕末維新史に予備知識がある人向けである。

幕末維新の大きな流れの中で長州戦争というある意味小さなひとつの軸をモチーフとし、それを幕府側と長州側の2つの面より描いている。
そして、その中から幕末維新史の大きな流れの移り変わり、切り替わり(切り替わった理由・要因)を浮かび上がらせることに成功している。

なぜ徳川幕府が崩壊したのか、なぜ長州は勝利したのかが分かり易く描かれている。

個人的には、プロローグとあとがきが秀逸と思う。
予備知識がある人であれば読んで損はない。
幕府を倒壊させた長州戦争 ★★★★☆
日本の歴史の中で幕末維新史ほど多くの議論を呼ぶ時代は少ない。徳川幕府の倒壊という歴史的な大事件が開港を求める西欧列強の圧力の下で展開される。この過程でのスローガンは尊皇攘夷であり大政奉還である。この旗印の下で、ただし「攘夷」はいつしか置き去りにされた形で、日本は近代天皇制の時代に移行する。ここでの疑問は、武威を誇り260年にわたって太平を謳歌した徳川政権がなぜ倒れなければならなかったかということである。徳川幕府の側も政治的スローガンは討幕派と共有するに至っていたと見られるからである。
本書は冒頭に「長州戦争は、徳川幕府の命取りになった戦争である」と述べてその問いに明快に答えている。武力によって維持された徳川政権は武力によって打倒された。本書の記述からは因習にとらわれた政権は意思の統一を欠き従ってその武力の根源である封建諸侯を効果的に動因する力を失っていたことが読み取れる。他方、クーデターによって藩政、さらには軍制の改革を果たした長州藩はすぐれた銃器を装備することによって武力において幕府軍を凌駕するに至った。その実力は四境戦争とも呼ばれる第二次征長戦争で遺憾なく発揮された。この戦闘の記述(第4章)が本書の白眉である。幕府軍はその政治的、軍事的な力量において「裸の王様」であることをこの戦争において見透かされたのであった。戦闘の詳細は資料の引用によって示されている。なかでも多くを依拠している「防長回天史」についてはどこかでその資料としての性格を明らかにして欲しかった。