資本主義のグローバル化、IT革命に金融革命。90年代より、好景気に沸くアメリカを発信地とする新しい波が押し寄せている。かたや、未だ「失われた10年」から脱出しきれていない日本は、日本的経営の長所に対する自信までをも失ってしまった。しかし、会社は株主のものでしかないというアメリカ的な株主主権論は、「ポスト産業資本主義」と呼ばれるこれからの時代、本当に「グローバル標準」としての地位を確立するのだろうか。
本書のなかで著者は、会社とは何かを根本から洗い直し、資本主義の変遷をおさらいしつつ、ポスト産業資本主義にふさわしい会社のしくみを考察している。もともとインタビュー原稿だったものを書き直したというだけに、全体を通して「ですます調」の読みやすい構成になっているのが特徴。また、論の運び方がゆったりとしており、カタカナ用語もできるだけ平易な日本語に置き換えているため、会社論と資本主義論という難解なテーマであるにもかかわらず、論旨がすんなりと頭に入ってくる。著者は、MITで経済学博士号を取得後、各国の大学の助教授や客員教授を経て、現在は東京大学経済学部教授として活躍している。『貨幣論』や『二十一世紀の資本主義論』などの著書を持つ経済学者だ。
著者は、前半のかなりの紙幅を「法人とはなにか」を説くスペースにあてている。読んで字のごとく「法の下でのヒト」である反面、株主から見れば、株式という「モノ」に過ぎない法人。この二面性がきちんと理解できれば、なぜ資本主義の変遷とともに最強と呼ばれる会社システムも変化していったのか、ポスト産業資本主義時代に求められるであろう会社システムとは何か、そして理想的な働き方とは何かについても、読者なりの回答が出せるに違いない。
今を生きる経営者やビジネスパーソンはもちろん、これから社会に出る学生にも、ぜひ読んでほしい1冊である。(朝倉真弓)
若手法務担当書店
★★★★☆
「会社とは株主のためのもの」というのが結論になりつつあるこの日本で、決してそうではないということを簡潔な文章で説明します。この本の論理を知らずしてコーポレート・ガバナンスについて語ってはいけないと思います。
KA
★★★★★
字が大きくて、簡単に読みきることができる本です。文章も上手いです。
Books TG04
★★★★★
さまざまなビジネス雑誌で、今年の経済(経営)書のベスト○にランキングされた1冊。基本的な平易な表現で語られているので、読みやすくかつわかりやすい。(ほり)
こまひこ書房
★★★★★
「会社は誰のものなのか」という問いかけから、これから先の会社のあり方を問う本。アメリカ的「株主主権」論と日本的「会社共同体」論という二つの論からより未来的な会社のあり方を考察している。
青山書店
★★★★★
4章ぐらいから急激に面白くなります。サラリーマン必読。
理系のための教養大学
★★★★★
会社ってだれのもの?会社の所有と経営の分離って?アメリカ型のコーポレイトガバナンスと日本のカイシャってどこが違うの?法人ってなに?・・・・・・この本にわかりやすーく書かれています。お勧め!!
真善美堂書店
★★★★★
バブル崩壊後の日本の経済状況やそれにともなう日本的な会社の変化をイントロにして、経済学的、法学的、歴史的かつ哲学的に資本主義、ひいては人間の本質へと迫っていく本書構成のすばらしさは圧巻であり、身震いすら感じさせる迫力がある。これほど本質的かつ丁寧に、そして学際的なアプローチをもって、近代の会社形態を通じて資本主義とは何かを探求したテクストは他に類を見ない。著者のこれまでの成果を大きく踏み越える名著である。