さすがとしか言いようがない。
ユーモアと皮肉を織り交ぜつつ、読者に作品の古さをまったく感じさせないそのコンテンツ。
時代と読者層を選ばない彼の作品は、読んでまず損はないと思う。

内容は、「宇宙の指導員」や「組織」など、ミステリー・テイストの作品から、
「雪の夜」や「夜の道で」といったちょっぴり切ない気持になる作品まで、作品の彩りは豊か。
そして何といっても、オチを読めにくいのがまた魅力的。すべて短編なので、ちょっとした空き時間に区切りよく読めるのもうれしい。

一冊手元に置いておきたくなるような、そんな本です。

　日常の延長にあるような世界から、想像の翼をはためかせてくれる世界まで

　様々な「夢」の世界を見せてくれる一冊です。

　その中で私のお気に入りは

　「不運」　　　　　　主人公の不幸ぶりに同情しつつも笑ってしまいました。

　「囚人」　　　　　　ＳＦアニメを思わせる世界観と、主人公と看守に宿る哀愁が魅力的です。

　「上流階級」　　　　権力者の狂気がユーモラスに描かれています。

　「組織」　　　　　　「組織」と「個人」の関係について考えさせられます。

　「すばらしい食事」　「悪意」の持つ引力のすごさと意外性のある結末に驚かされてしまいました。

　

　

目次
　椅子
　雪の夜
　処方
　凝視
　夜の道で
　夢の男
　利益
　不運
　症状
　顔のうえの軌道
　友を失った夜
　健康の販売員
　むだな時間
　乾燥時代
　囚人
　白昼の襲撃
　転機
　宇宙のネロ
　オアシス
　賢明な女性たち
　宇宙の指導者
　上流階級
　夜の侵入者
　鋭い目の男
　再認識
　目撃者
　報告
　循環気流
　専門家
　年間最悪の日
　模型と実物
　老後の仕事
　悪魔のささやき
　組織
　報酬
　すばらしい食事

　解説　各務三郎
　カット　真鍋博

1000編を越すSF短編小説を残し、ショートショートの神様と呼ばれた星新一さんの作品36編を収録。

短編なので読みやすく、それでいてしっかりオチがついていて、時には自分の考えの及ばないような意外性のある結末に感心し、自分とは違った新鮮な考えに触れ、ものの見方や考え方が広がったような気がします。また、星さんの作品は後世多くの人々に読んでもらえるようにと、具体的な地名や人名といった固有名詞をなるべく登場させないことで、通俗性を出来る限りなくし、読みやすく分かりやすい文章で書かれてます。そのため老若男女を問わず大いに楽しむことができると思います。

傑作ショートショートが収められています。個人的には老後の仕事、宇宙のネロ、囚人などが好みです。バラエティ豊かなショートショートは少し時間があるとき、寝る前などに読めるので便利です。またオチの落とし方も抜群にうまいです。