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考えることの科学―推論の認知心理学への招待 (中公新書)

価格: ¥693
カテゴリ: 新書
ブランド: 中央公論社
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当時気づかれなかった行動経済学の基礎 ★★★★★
後に行動経済学というものが話題になり、それに釣られて読んでみたときに、その世間での反響ぶりがピンとこなかった。その前にこの本を読んでいたからである。この本が出版された当時の経済学は、合理性だの戦略的思考だののお役立ち度を盛んにアピールしていて、認知の「に」の字も出てこなかった(「経済心理学」という名で人知れず研究はされていたが)。そのため、この本では経済の「け」の字も出てこないが、行動経済学と言われるものの基礎となっている大きな柱のひとつがここにある。そういう歴史的な点を除いても、ややもするとコケ脅し的に例の羅列に終始しているそれらの本よりもコンパクトに本質的なところを押さえている。

この本で、特に実践的に役立ったのが、事後確率を求めるルーレット表現である。いわゆる三囚人問題やモンティホール問題のような問題で事前確率が等しく割り振られていない場合、等確率の際にありがちな説明を一般化して適用させることができないのだが、ルーレット表現で描いてみて納得できた。通常バージョンがピンときていない人はもちろん、通常バージョンを理解している人にも一読を薦める。実は、たまたま理解できたと思っているだけだったことに気づく人も多いだろう。
行動経済学の本を読む前に ★★★★☆
本書は、文中にたびたび登場する心理学者?の、カーネマンがノーベル経済学賞を受賞する以前に出版された、比較的古い認知心理学の入門書である。

1、論理的推論
2、確率的推論
3、日常場面における推論
という構成になっている。

1、ではメンタルモデル、2、ではベイズの定理あるいはヒューリスティックス、3、ではスキーマやフレームに関する記述が参考になり興味深かった。全般的には、現実の人間が行う推論・認知の際に引き起こされるバイアスやエラーを解説している本と言える。しかし、われわれ凡人はがっかりする必要は全くない。人の短所や欠点というより、実際のこの世の中で日常生活を送っている、実在する人間の特性を記述しているにすぎないのだから。むしろこういったバイアスを所与のものとすることで、より合理的な推論や決定に近づける、あるいは将来の制度設計に役立てる可能性のあることに感謝したい。
そうして、行動経済学関連の本を読む前に是非読んでおきたい。
入門書かくあるべし。 ★★★★★
人は論理学の法則のとおりに思考する訳ではないし、統計学の法則のとおりに推測する訳でもない。論理学や統計学はむしろ、人の推論を事後的にチェックし、正当化するためのものだ。論理学や統計学の法則と、人の直観的推論の間には「ギャップ」がある。この「ギャップ」を素人でも理解できるように丁寧に解説したのが本書である。

本書は、論理学や統計学から外れた人の直観的推論を単なる「間違い」として切り捨てるのでもなければ、「本当は常に合理的」なものとして絶対化するのでもない。独自のルールを備えた探究対象として捉えつつ、同時に適切な解説が与えられれば変更可能なものと捉えている。そこに開けるのは教育への応用可能性である。

実はそれほど期待せず読み始めたのだが、驚くほど面白かった。入門書かくあるべし、新書本かくあるべしと言いたくなる。著者の文章の巧みさも特筆すべき点だ。
人間の推論の危うさ ★★★★☆
様々な事象が絡み合っている現代をイメージすると判断に起因する事象、統計などは学んでおく必要のある項目だとの認識があり購入して通読
認知心理学についての序章的な説明をしている本だと思う。科学的な「統計」「論理」と人間が判断を下すときの判断根拠とのずれの原因を分類して特定してくれている。人間がいかに間違った根拠で判断を下してくれているかの説明をしてくれているので、判断を行うときに自分の判断があっているか間違えているか考えるときのフィルターになる様々な要素の説明に当たると思う。人間の問題解決における事象化のキーワードになる「スキーマー」「スクリプト」「フレーム」の説明や、認知しにくい確率のイメージ化「同系図式」など興味を引くものが多かった。
自分の判断と、論理的な統計的な結論とのずれがあることをはっきりと認識しておくことは、判断をする上で大事なことだと思う。そのずれの原因を科学の側面からと人間の側面から見極めるのに役に立つ書籍だと思います。
思考のクセを知る ★★★★★
人間の推論に対する認知心理学の知見が、コンパクトに纏められた好書。

例えば、次のことが不思議だと感じた方は、是非ご一読を!
・ 感染していれば98%の確率で陽性反応が出る検査薬で検査したら、陽性反応が出た。なのに、いくつかの要素から導き出される感染確率は、絶望的じゃない?
・ 新人王の野球選手が2年目のジンクスになるのは、当たり前?
・ 仮説「すべてのカラスは黒い」は、対偶「黒くないものはカラスではない」でも検証できるはずだが、「白いテーブル、茶色のイス、‥‥」と調べるのって正しい?

本書で取り上げているのは、わざと錯誤させようとしたとしか思えないパズルや数学のような事例が多いので、そのまま実生活に応用するのは、一見難しい気がする。著者によれば、「人間はもともと合理的で賢いものである」とする見解相違もあるらしい。
ここで、ちょっとだまし絵(ルビンの杯、若い女と老婆、等)を考えてみたい。心理学で利用されるだまし絵だが、企業や交通の安全教育では、だまし絵を例に、人間の持つ誤認識しやすい特性への注意が喚起される。では、職場や道路にだまし絵みたいな状況があるのだろうか。そのまま当てはまるような事例はまずないだろう。しかし、だからと言って、だまし絵で喚起された注意が無意味とは思えない。勝手な思い込みを戒め、事故を予防するのに、潜在的な効果をあげているのではないだろうか。本書が示した推論の錯誤事例は、まさにこのだまし絵のような効果を有しており、実生活でも活用できると思う。
因みに、だまし絵で気に入っているものの一つに、以下がある。
・ (A)>----------< (B)<--------->
多くの人は、線分の長さは「(A)(B)とも同じ」と回答すると思うが、実は(A)の方が長い。この錯誤は、この図をミューラー・リヤーの錯視図と(ではないのに)見做したバイアスによる。

他人と議論して話がかみ合わなかった経験は誰でもあると思う。見解を異にする集団同士になると、事態はさらに先鋭化する。こんなとき、著者が本書の終わりで記した「人間は(考え違いをしてしまうこともある)自分の思考のしかたを自覚し、いっそう洗練された適応的な思考のしかたを身につけることができる‥‥。論理学も、確率論も、心理学の知見も、思考の自覚と改善のための道具であり情報である‥‥。」が、解決への糸口を与えているような気がする。本書で触れられた考え方が、世の中に拡がっていくことを期待したい。