「当たるも八卦当たらぬも八卦」と言うことわざがある。世間では占いと言えばいい加減で、易者は世捨て人か、困っている人を食い物にするぼったくり屋というイメージが強い。しかし、熟練者が真剣にやれば必ず当たるというのが、嘉右衛門の信条で、日露戦争の勝利や伊藤博文の暗殺を見事に予言している。
商売の天才だった青少年時代、異人との金売買による数年間の獄中生活、旅館経営から瓦斯燈、鉄道、農場経営、海運事業まで手を広げた中年時代、各界の名士と山荘で交遊した晩年と、嘉右衛門の生涯はそのまま文章にしただけでも小説以上におもしろい。