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アフガニスタン―戦乱の現代史 (岩波新書)

価格: ¥777
カテゴリ: 新書
ブランド: 岩波書店
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   一筋縄ではいかないアフガニスタンの現代史を平易に、かつ十分な目配りをきかせて描いた好著である。古来、東西文化が行き交ったアフガンは「文明の十字路」と言われてきたが果たしてそうだろうか、と著者は問う。文明の蓄積もなく、ただ荒廃しきったこの国を著者は「戦乱の十字路」と位置づけ、戦乱がもたらしたプロセスとメカニズムを丁寧にたどる。

   まずアフガンを中心とした中央アジア、ユーラシア大陸で19世紀から争われてきた英・露のグレートゲーム。第二次大戦後は米・ソに役者は代わったが、この長年の大国の干渉がアフガンの近代国家建設を阻害し、破綻させた。ソ連撤退(89年)でグレートゲームは終わったものの、イスラム勢力間の内紛が起き、タリバン登場に道を開いた。大国だけではない。パキスタン、イラン、サウジアラビアなど周辺の同じイスラム諸国も「真正なるイスラム支援」の美名のもとに国家エゴイズムを隠蔽しながら、アフガンの民族統合と国家統一を阻んできたとの指摘は重要だ。

   何回も現地を訪れた元ジャーナリストの著者の鋭い観察眼は、新指導者のカルザイ大統領の服装にも注がれる。ベストドレッサーにも選ばれたパシュトゥーン人の大統領は、船体を逆さにしたようなタジク人のパコール帽を常にかぶっている。著者はここにモザイクのような多民族社会で民族融和を模索する大統領の緻密な計算を見る。丘に上ると見晴らしがきいて、遥か地平線まで望めた。そういう読後感を与えてくれる1冊である。(西川 恵)