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ユーゴスラヴィア現代史 (岩波新書)

価格: ¥886
カテゴリ: 新書
ブランド: 岩波書店
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多様な図表と、抑制された文章で論じられたユーゴの歴史 ★★★★★
本書は多様な民族・宗教・言語・文字を内包し、「モザイク国家」と呼ばれたユーゴスラヴィアの
統合と分離の歴史を、中世から現代までという長いスパンで論じたものである。

陸続きであったため、そしてバルカンの支配者がその時代によって異なったため、
歴史的に諸民族が混在し、混血が進むことになった。
どの様な境界を引こうとも、必然的に少数民族問題を抱え込むことになったのである。
ただし、このような状況からボスニア内戦のような事態もまた必然だったと考えることは出来ず
民族の単一性と同質性が追求されるまではユーゴ存続の可能性はあったというのが著者の立場である。
著者によれば、多様性や異質性を前提とし、地域に対する帰属意識こそ強化すべきであった。

興味深かったのは、第一次大戦後に形成されたユーゴ王国が「国民国家」と規定されていたこと。
王国全域のセルビア化とも捉えられかねない民族の平等や均質化を進めようという試みが、
事実上「多民族国家」であることを認めることで失敗した戦間期は、
同時期に形成された国家群について考える上で極めて有益である。

紛争中に形成された「セルビア悪玉論」や特定の民族に与することなく、
等しく距離をとり、感情を抑制した著者の議論には説得力があった。
加えて、多様な民族構成を説明するために使用された地図や図表は10点以上で分かり易い。
わずか200頁強の新書でありながら、読み応えのある好著である。
連合か民族自決か ★★★★☆
セルビア公国誕生からボスニア紛争まで簡潔に纏まってい
る。地図や年表が充実しており、かなり理解しやすい作り
になっている。

論調は基本的に連合国家に好意的である。確かに連合にな
ったことでかえって民族差別が是正され、教育等の国家の
基幹が発展した点は評価できる。このような視点から著者
が連合崩壊の原因を国民の意思ではなく欧米の失策に求め
ている点も面白い。

ただ行間に著者の単純な社会主義、多民族国家の憧れが透
けて見える点は気になった。またチトーの記載が割とあっ
さりしていた点も不満だ。なんといっても彼が連合形成の
最大の功労者なのでもっと彼の思想について記載があって
良いと思う。
地域、民族の歴史を踏まえた労作 ★★★★★
「民族浄化」やNATO軍による空爆などの悲惨な状況が、なぜ現代のヨーロッパにおいて生まれたのか。ボスニア内戦の構図を理解するのに有益な書。

著者もあとがきで記しているように、「現代史」と銘打ちながら、中世のセルビア王国やクロアチア王国などから紹介しており、南スラブ地域の通史でもある。このため、読み始めた当初は、第一次世界大戦後に成立した「第1のユーゴ」より前の、こうした歴史的記述部分はなかなか頭に入りにくく、ある程度読み進んだところで再度冒頭に戻って読み返すほどだった。

しかし、その結果、ボスニアに混住していたそれぞれの民族の歴史的な経緯や意識が、そのルーツである中世の「王国」時代から理解でき、チトー率いる「第2のユーゴ」解体から内戦に至る流れはしっかりと追うことが出来た。

セルビア人、クロアチア人、ムスリム人それぞれの歴史を丹念に追っているからこそ、「セルビア人悪玉論」に偏る「西側」の見方を超えた客観的な記述が出来たのだろう。地域、民族の歴史を踏まえた労作といえる。
民族自決の限界(同日一部修正) ★★★★☆
 1946年生まれのバルカン近現代史研究者が、ボスニア和平直後の1996年に刊行した本。ユーゴスラヴィアは、オスマン帝国とハプスブルク帝国の支配下にあった南スラヴ系諸民族が、第一次世界大戦に伴う両帝国解体を契機に、イタリアとの対抗上、セルビアを中心に統一国家を形成したものである。しかし、ユーゴはその多民族性にもかかわらず、「単一民族」の民族自決に基づく「国民国家」とされたため、主にクロアチア人から批判を受け、国王は独裁により民族主義を抑えようとし挫折した。1941年枢軸国の侵攻によりユーゴは分割され、クロアチア独立国が建国されたが、共産党のチトーを中心にパルチザン闘争が組織され、社会変革を実施しつつ、独力で対独戦争と内戦を戦い抜く。この過程でチトーは民衆の圧倒的な支持を受け、戦後まもなく建国された連邦制国家の下で、急速な社会主義化を進めたが、まもなくソ連と対立し、コミンフォルムから追放された。この厳しい状況下で、ソ連との対抗上ユーゴが掲げた政策が、自主管理と非同盟政策であり、60年代には市場メカニズムも積極的に導入された。しかし、それは結果として経済的な格差の拡大と、民族主義の台頭をもたらす。チトーは、セルビアの主張の抑制と党の積極的役割の強調により、連邦を緩やかに統合しようとするが、彼の死後の経済危機と、東欧変革の中での複数政党制による自由選挙は、民族主義を助長し、1991年連邦は解体した。しかし各共和国で少数派に転落するセルビア人はこれに反発し、まずクロアチアで、次いでボスニア・ヘルツェゴヴィナで内戦が勃発し、最終的にNATOの軍事介入を受けることとなる。著者はこのユーゴの経験から、民族混住地域での民族自決の不可能性と、帰属意識の多重化による民族意識の相対化の必要性を強調する。コンパクトに基礎的な事実が分かる。
バルカン地域の歴史が分かりました ★★★☆☆
ユーゴスラビアで戦争があったのは知っていましたが、何故おきたのかということに関しては知らないままでした。
サッカー日本代表オシム監督に関する本を読み、改めてこの地域で何が起きていたのか、というのを知りたくなり本書を購入しました。
世界史に疎い私にとっては最初の頃は難しかったですが、読んでいくうちにこの地域の特色や背景について理解できるようになりました。
ただ、本書が書かれたのが1996年という内戦が終了してから時が経っていない頃なので、内戦に関する詳しいところは記述されていないように感じました。
本書は、旧ユーゴスラビア地域の近代の変遷について知るにはいい本だと思います。