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ソーネチカ (新潮クレスト・ブックス)

価格: ¥1,680
カテゴリ: 単行本
ブランド: 新潮社
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あきらめの女。・・「通訳ダニエル・シュタイン」もぜひ! ★★★★★
読みやすく、ふーん、と読了し、これでおしまいか、「停電の夜」同様、評判ほどじゃないな、こんなもんか、と思ったら、3日後ずしーんときました。

ずしーんはなんなんでしょう。上のレビュアーのかたのように、
確かに「かわいい女」をほうふつとさせます。

なんでも肯定する主人公の生きかたはたしかに同じですが、
チェーホフの「かわいい女」は目の前の愛の対象への没入ぶりが、
過去のふっきりぶりの爽快さがキャラクターを立たせていますが、
本作の主人公は過去をふっきってはいません。
「あたしの人生にしたら、マシなもんだわ」という
『あきらめの女』っぷりがすごいのです。

これは中島みゆきや日本の演歌の感性に近いのではないでしょうか?

作者は東洋的ともいえる「諦念」の人です。
最近作「通訳ダニエル・シュタイン」での物語る力には
脱帽しました。というか、魂、揺さぶられました。
同じ新潮社のクレスト・ブックスシリーズから出ています。
ぜひご一読をおすすめします。びっくりします。

不思議に読後感のいい小説 ★★★★☆
現代ロシアの女性作家の小説。

ソーネチカという女性の一生を淡々と描く。夫が自分の娘の友人とできてしまうのを受け入れてしまう彼女の生き方は、普通なら違和感を覚えるところだけど、彼女の筆力か、自然に読めてしまう。

不思議に読後感のいい作品。
人生は宝石のよう ★★★★☆
ソーネチカは人間というもの、男というもの、女というものについて、またひとの一生について「そういうことがあるものかも」と、客観的視点にたって見ることが出来、その上で自分の人生途上に起こるさまざまな出来事を大きな財産にしてしまう稀有な女性。
このような女性を生み出したのはやはり、幼い頃からの読書ではないだろうか。読書はまさに精神の食べ物なのだと感じた。
そして、ソーネチカのような女性は今のせちがらい世の中でもいるだろうと思った。この作品が数々の賞を受賞していることはうなずける。
ウリツカヤ史の別の本も手にしてみたくなった。
買いです。 ★★★★☆
読後の印象が、いわゆる「名作」で、登場人物の名前からしてトルストイやツルゲーネフ、あらすじがゾラやモーパッサンを彷彿とさせます。レヴューにあらすじはネタばらしの反則のような気がするので割愛しますが、やれエンタメだ、やれホラーだ、やれメタフィクションだ(はないかもしれませんが)の昨今の趨勢をお嘆きの諸兄には、昔、読み耽った「名作」の現代仕様として(昔、読んだ「名作」ほどこってりはしていないので)楽しめること請け合いです。
ある女性の生に寄り添う作家の眼差し ★★★★☆
リュドミラ・ウリツカヤのこの作品が、後世においても高い評価を受け、文学において高い位置を与えられることはないかもしれません。しかし、この作品を読み終えた読者の心の内には、静かではありながらも絶えることのない余韻が残ることでしょう。
貧しいソーネチカは、図書館に勤めていた際に知り合ったロベルトと結婚します。夫は芸術家で反体制活動家であるため、家族はソヴィエト国内を転々とし、貧しい生活を強いられます。しかしソーネチカは、書物、夫、娘に囲まれたその生活に幸福を見出します。いえ、「見出した」というのは正確な表現ではないでしょう。彼女の送る生活に、或いは彼女が送った可能性のある生活に、彼女は決して不幸という感情を抱くことはないでしょうから。
女性が何らかの権力によって蒙る受難がこの作品のテーマであると捕らえることは、不適切ではないでしょうか。貧困、夫の不実、ソヴィエトによる圧制、こういった要素が、彼女の感情に大きな影を落とすことも、彼女の感情を引き裂くこともありません。ソーネチカの沈黙を、彼女の人生に対する服従を非難することができるかもしれませんが、それはこの作品の描くところを曲解することではないでしょうか。作家はソーネチカの傍に寄り添って歩みを共にしており、読者はその少し後ろから彼女達を眺めやるのみです。
翻訳家の柴田元幸氏の書評が、この作品の魅力を的確に述べています。「・・・・・・とにかくそういう人(ソーネチカ)が作者の頭から生まれてしまったのであり、そうやって生れた人を、作者はただそういう人として描いた。人間を祝福する上で、これ以上正しいやり方があるだろうか」。