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ペンギンの憂鬱 (新潮クレスト・ブックス)

価格: ¥2,100
カテゴリ: ペーパーバック
ブランド: 新潮社
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物言わぬ友人なのか、冷たい第三者なのか。ペンギンの瞳は多くを語る ★★★★☆
印象的な装丁がこの不思議な浮遊感に満ちた小説に非常にマッチしていて、手に取らずにはいられなくなりました。

舞台はソ連崩壊後のウクライナ。売れない小説家の主人公ヴィクトルは、憂鬱症のペンギンと暮らしながら、まだ生きている
有名人の追悼記事を書くという新しい仕事にありつきます。生活のため、割の良いこの仕事をなんとなく続けながら、やがて友人の娘を
引き取る事になり3人の擬似家族としての生活が始まります。

彼らを繋ぐ確かな物は何も無いにも関わらず、不思議な調和と平穏が生活に訪れます。ですがやがて追悼記事を書いた人が
本当に死んでいくという事件が発生し、物語は暗く不安定な結末へと繋がっていきます。

歴史に翻弄され続けたウクライナという土地において、社会、政治、権力というものは自分を守ってくれる物ではなく、
不意に困難を強いる物と思わざるを得ないのかもしれません。この小説が不条理な背景にはこうした現実の社会情勢がある事は事実でしょう。

そして、そうした外界の変化に抗う力の無い者達は、動物園のペンギンのようにただじっと空を見つめながら時が過ぎるのを待つしか無く、
確かな物など何もない、本質など幻想であると思うことが今を生きる正しいスタンスなのだとこの小説は訴えているように思います。
これが読後の最初の印象でした。

ですが、それだけではどうにも釈然としませんでした。ペンギンが象徴するものは果たしてそれだけでしょうか?罪無き少年のようにも、
暗い過去があるようにも見えるペンギンの黒い瞳の奥に、果たして主人公は何を見たのでしょうか?

「本当は希望を持ちたいんだ」。もし彼がそう言ってくれるなら、少し救われた気持ちになれるような気がしました。


物騒な話だがシュールなおかしみ ★★★★★
 舞台はウクライナの首都キエフ。憂鬱症のペンギンと暮らす売れない作家。ある日、短編作品が得意な彼のもとに新聞の死亡記事を書く仕事が舞い込んだ。故人になりそうな有名人の死亡記事をあらかじめ書き上げてストックしておく。ところが、身辺に不審な出来事が続く。どうも様子がおかしい…。

 ジャーナリストが暗殺され、マフィアが暗躍する物騒な世相を背景にしているのがうかがえる。ところが、無口なペンギンがヒョコヒョコ歩いたり、ボーっと突っ立っていたりする姿を思い浮かべながら読み進めるとこれがまた何ともユーモラス。そんなちょっと現実離れした設定のおかげで、剣呑な出来事にもむしろシュールなおかしみすら感じられるところが不思議な小説だ。
ユーモアに満ちた小説 ★★★★★
憂鬱症のペンギンと暮らす売れない短編小説家が、ひょんなことからまだ死んでない人の死亡記事を書きだしたことから、いろいろな出来事に巻き込まれていく話。

いくらロシアといってもペンギンをペットとして飼えるとは思わないが、そんなことが全然気にならないぐらい、不思議な物語。

淡々としていて、それでいて味のあるいい話。ロシアの話だから暗い話かと思ったら、むしろユーモアに満ちている。友人の死なんていう悲しい出来事も、あっさりと書かれている。でも主人公の心情がよく伝わってくる。とてもよかった。
南極の氷山のような世界 ★★★★☆
私たちの生活は、たとえば南極の氷山のようなものらしい。
水面に出ている一角だけでは、水面下の様子はわからない。

冴えない小説家ヴィクトルの生活は、ペンギンの訪れが直接の原因ではないにしろ、なにかしらの引き金となって、気がつけばものの価値やら感覚やらがどうしようもないほどに変わってしまう。
別に急に世界が変わってしまったわけではなくて、水面下にはいつもあった知らない世界が、自分の日常に侵食してくるのだ。

家の鍵は破られる、大金と少女が置いていかれる、発砲事件が相次ぐ・・・
まるでへたくそな冗談のような世界が、つつましくも平穏だった日常をのっとっていく。
そこにまた、閑話休題といったようにペンギンの描写が入ってきて、いい感じに話の腰を折る。

なぜペンギンなのか。こればっかりはわからない。
緊迫した場面で、ペンギンがぺたぺたと歩いている光景を想像すると、なんだか気が抜けてがっくりとなる。

もろい世界の上に生活するのは、人間もペンギンも同じらしい。
温暖化の影響が出ないことを、切に祈る。
著者はペンギンを飼っていません。 ★★★★★
ソ連崩壊後のウクライナの首都キエフでのお話。憂鬱症のペンギンと暮らす売れない小説家が、政財界の大物が死ぬ前に、「追悼記事」をあらかじめ書いておく仕事を依頼される。ホンワカした雰囲気ながら、不条理に満ちた長編小説です。「大統領の最後の恋」もお勧めです。