勝負とは?
★★★★☆
「負けてやれ」
意外な言葉に、大治郎は驚いて父小兵衛を見た。試合は精根のかぎりをつくして
戦うものだという信念を捨てられない大治郎は、全力で谷鎌之助に立ち向かうが・・・。
表題作「勝負」を含む7編を収録。「剣客商売」シリーズ11。
誰が見ても明らかに実力が上だからといって、必ず勝つとは限らない。いつもの力を
発揮できるかどうかは、おのれの心の状態により左右される。大治郎と鎌之助の試合も
まさにそうだった。勝負というのは不思議なものだと、表題作の「勝負」を読んでそう
思った。
そのほかに印象深かったのは、ある男の哀れとも思える生き様を描いた「その日の三冬」、
男と女の不思議な縁を面白おかしく描いた「時雨蕎麦」、思わぬなりゆきから敵討ちが
首尾よく運んだ話を描いた「助太刀」だ。
また、この作品では大治郎・三冬夫妻の子供が誕生する。その子がこれからどう成長して
いくのか?次回の作品を読むのが楽しみだ。