非情と情愛の小兵衛♪
★★★☆☆
「まだ・・・まだ死ねぬぞ」
もう長い命ではない村松太九蔵は、世話になった村に害を及ぼす10余名の無頼浪人たちの
始末を最後の仕事と決めていた。その村松に危機が迫ったとき、助けに現れたのは秋山小兵衛
だった!表題作「十番斬り」を含む7編を収録。「剣客商売」シリーズ12。
一番印象に残ったのは、「白い猫」だ。果し合いに向かう途中で小兵衛が目にしたのは、
昔飼っていた猫によく似た白猫だった。亡き先妻お貞が拾ってきたタマに似た猫と関わり合った
ことが、果し合いに思わぬ影響を及ぼすことになるのだが・・・。この話では、小兵衛のお貞に
対する深い愛情が垣間見え、ちょっとしんみりした気持ちにさせられた。悪い者には非情さを
見せる小兵衛だが、心の奥には熱い情愛もちゃんと持っている。そういうギャップも面白い。
このシリーズもそろそろ後半。このまま読み進め、読み終えてしまうのが惜しい気もする。
作者の巧みな筆さばきが見事で、とても魅力あるシリーズだと思う。