味わいのある作品
★★★☆☆
26年前、秋山小兵衛が助太刀した滝久蔵は、見事に父の敵を討ち富山に帰った。
さぞかし立派な武士になっているだろうと思っていた小兵衛だが、立ち寄った店で
偶然落ちぶれた滝久蔵の姿を見る。しかも久蔵は、何やら良からぬことを企んでいた・・・。
「剣客商売」シリーズ16。
いよいよ剣客商売シリーズも最終話となった。
見る影もなく落ちぶれ、しかも悪事に手を染めている。そんな滝久蔵を、小兵衛は
複雑な思いで見つめるのだが・・・。さまざまな人間の思惑が入り乱れ、今回も目が
離せない展開になっている。相手が誰であれ、正義を貫くためには容赦しない秋山
小兵衛の潔さは見事だ。複雑に絡み合ったいろいろな事件をどう収束させていくのか?
そこのところも充分読み応えがあった。
勧善懲悪の爽快さ、人生の悲哀や浮沈、人情、時の流れ、そして老い・・・。どの話にも
深い味わいを感じる、面白いシリーズだった。
あぁ淋しい。ついに終わってしまった
★★★★★
剣客商売を読み出して、秋山父子、まわりの人々にまみえ、なんと楽しい時間だったか。
別巻も含め、この最終本までも、一気に、文字通り一気に読んでしまったが、この「浮沈」が最後だとわかっていたから
私はあえてこの本を、数ヶ月も机の上に置いたまま、読めずに来てしまった。
だって、これで皆さんとお別れなんて淋し過ぎるじゃないですか。
でもとうとう、いずれ来るその日を迎えてしまった。
いやぁ、最後の最後まで、実に楽しいすばらしいシリーズだった。
本作も、いつも通り時間が過ぎ、江戸の町の生活があり、ちゃんとみな年をとっていった。
そして、ある意味淡々と、しかも(池波氏が翌年の自らの死を知っているがごとく)きちんと始末をつけて
将来を暗示し、あるいはきっぱり言い切って、終わってしまった。
やれ淋しい。
解説の常盤さんのように、きっとこれからも何度も何度も読み返すんだろうなぁ。
いやぁ、本当に有り難う。いい人達に知りあえた。
こんな思いになる小説は、正直いまだなかった気がするな。
あぁ淋しい、ついに終わった
★★★★★
新装版は売り切れのようですね。ただ、装丁がきれいだから、全館新装版で買っている人はそっちがいいかも。
剣客商売を読み出して、秋山父子、まわりの人々にまみえ、なんと楽しい時間だったか。
別巻も含め、この最終本までも、一気に、文字通り一気に読んでしまったが、この「浮沈」が最後だとわかっていたから
私はあえてこの本を、数ヶ月も机の上に置いたまま、読めずに来てしまった。
だって、これで皆さんとお別れなんて淋し過ぎるじゃないですか。
でもとうとう、いずれ来るその日を迎えてしまった。
いやぁ、最後の最後まで、実に楽しいすばらしいシリーズだった。
本作も、いつも通り時間が過ぎ、江戸の町の生活があり、ちゃんとみな年をとっていった。
そして、ある意味淡々と、しかも(池波氏が翌年の自らの死を知っているがごとく)きちんと始末をつけて
将来を暗示し、あるいはきっぱり言い切って、終わってしまった。
やれ淋しい。
解説の常盤さんのように、きっとこれからも何度も何度も読み返すんだろうなぁ。
いやぁ、本当に有り難う。いい人達に知りあえた。
こんな思いになる小説は、正直いまだなかった気がするな。
人間味あふれる作品
★★★★☆
二十六年前に小兵衛が出会った人々と次々に再開していく話です。
この巻で一番のお気に入り人物は伊太郎です。二十六年前に敵討ちを成功させた滝でもなく、清純な心を持つ山崎でもなく伊太郎です。最初はだらしない青年かと思いきや最後には勇気あるところを小兵衛にみせつけます。
顔が悪徳商人っぽい顔のために損をする多四朗が登場します。私も顔で損をする人間なので痛いほどこの人の気持ちが解ります。「人間は中身だ」ときれいごとを言う人が世の中にいますが、顔が悪いだけで中身まで変に思われることが多々あります。顔が悪いだけで無実の罪を着せられます。多四朗の最後はかわいそうでなりません。第一印象は大事かもしれませんが、もっと人間の中身を見て欲しいと思いました。
いま、ここにある幸せ・・・
★★★★★
何気ない会話がいい。
「先生。今日は、いい日和でございますねえ」
「千造。こんなに心地よい日和は、一年の内、数えるほどだ」
「ほんとうに、さようでござんす」
「人の暮しと同じことよ。よいときは少ない」
「まったくで」