でも、読み始めたら、クレオパトラという、歴史上の、しかも古代エジプトの
女王が、とても身近に感じました。
歴史文学、として読むにはどろどろしています。
ピラミッドの壁画のように2次元のイメージのクレオパトラが3次元のイメージになる、生き生きと、あたたかい体温を持った一人の女性として、その吐息を感じられるように描き出す、宮尾登美子さんの筆力に圧倒される作品です。
本書では、14歳の少女時代からローマとの戦争に敗れ自決するまでのクレオパトラ、女王として周辺諸国との政争に明け暮れ、女性として母として恋愛に悩み子供の成長に心を砕く姿が、古代のエジプトとローマの風景と風俗、歴史を動かした人物たちとともに、いきいきと描かれています。
かと言って、本作を読めばクレオパトラの本当の姿がわかる!などと言うつもりはありません。伝記でなく、あくまで小説ですので、作者の好みも反映されているだろうし、想像・創造も入っているのでしょうから。一人の作家の描いたクレオパトラ像、古代エジプトを舞台にした歴史小説・恋愛小説として読んだほうがいいでしょう。
この作品を読んで、クレオパトラや古代エジプトにますます興味がわきました。これから関係のある本や巻末に載っていた参考文献などを読んで、自分なりのクレオパトラ像を築き上げていきたいと思っています。