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序の舞 (中公文庫)

価格: ¥1,200
カテゴリ: 文庫
ブランド: 中央公論社
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宮尾作品で一番感動 ★★★★★
宮尾登美子の伝記物としては、歌舞伎役者十一代市川団十郎の妻がモデルの「きのね」茶道宗家を扱った「松風の家」香道の「伽羅の香」などを読んで来た。

「序の舞」は人間国宝秋沢久寿栄がモデルの「一弦の琴」と同様、芸術家本人が主人公の物語で、女性日本画家上村松園を材としたものだ。

上村松園の名は昔から聞いていたが、この作によりその生涯を詳しく知ることが出来た。明治時代社会全体がまだ何でも男子が殆どのころで、女子は家庭に入ってろだった訳だが、それを打ち破って出て来た女性は結構いて、戦後それらの人々が沢山評価されている。

画が好きでこの道に入ろうとした津也も、様々な悪意に満ちた横槍、貶めと中傷に苦しむが、理解者である母勢以の終始変わらぬ助けと、この子は優れたものがあるとみた教師たちにより、戦後女性初の文化勲章を受けるという、日本画壇の頂点にまで登りつめる。

これには本人の並々ならぬ画に対する熱意が、全てをはねつけていく過程が読むものを圧倒する。美人画で有名だが、苦労の生涯の中で作品に深みが増してゆくのが良く書かれている。

母の存在も大きい。美空ひばりの母親が一卵性双生児といわれ、大きな庇護者であったのは有名だが、母勢以はそれ以上ではないか。この母でなかったらここまでなれなかっただろうと思った。

「遊女亀遊」という作品は、幕末外人客を強要された遊女亀遊が「露をだにいとふ大和の女郎花ふるあめりかに袖はぬらさじ」の一首を残し自害した話を描いたものだそうだ。

この作品を展覧会に出品したところ、顔を滅茶苦茶にされるという事件が起こる。係りが早く修復をというのを聞かず「うちにへんねし持つてはる人間がこんな卑怯な真似したことを、見物の皆さんによう見てもろうたらよろし」と会期中は直そうとしなかったそうだ。

宮尾作品はどれもそうだが方言が雰囲気を出し、ここでも京都弁が実に美しく生かされている。1984年発行アサヒグラフの別冊松園特集号を入手「一弦の琴」と違い画を参照しながらの読書も良いものだ。

小説と事実は違う訳で問題点もあるようだが、絵一筋に生きた松園の思いが良く書かれており、淑やかでありながら強靭な女性を描いてきた宮尾文学の中でも本作品は一番かと思った。松園については随想「青眉抄」を読みたいと思っている。
すさまじきもの ★★★☆☆

絵の大好きな母子家庭の次女が、世間知らず、男知らずなままに画家として成功していく成長物語。
男性に対する警戒心が薄く、父性に対する渇望があるので、三十も年上の師匠の子を二度までも妊娠してしまう。
絵一途のおんな弟子の弱点を分かった上で堂々と手込めにする師匠は「おんなの敵」かもしれないが、お洒落で芸事もそつなくこなす風流人で、遊び上手なところも魅力的なのだろうし、引っ掛かる方もそれくらい覚悟しているだろう。つうが敬愛するライバルの画家(自分より少し若い)に対する嫉妬なども醜くはあるが人間らしく、憎めない人物として立体的に造形されている。
この物語の主人公「つうさん」は世間知らずなので少し可哀想な気もするが、やはり彼女は世間知らずで一本気な大人としてアンバランスな部分があり、後半ではそれがますます顕著になる。
「うちはなんでこんなになってまで絵を描くんやろう。もううちは絵なんかいらん。女として幸せになりたいんや」
と云って、一回りも歳下の男性を追い回すさまは夜叉のようで、本当に怖かった。
結局は、「自分のアイデンティティは絵を描くことである」という境地に達せたようで良かったです。

生理的に苦手な部分があるので、好きとは云えません。
ただ、面白いということは否定出来ないので☆3つ。
宮尾登美子ならこれ! ★★★★★

「櫂」「春燈」「朱夏」「きのね」「寒椿」「天涯の花」「蔵」「クレオパトラ」…いろいろ読みましたが、私の宮尾作品ベスト1はこれです。
もう途中からは作者の存在が消え、「つうさん」が実体をもって浮かび上がって来ます。
「天才的な人」「努力の人」の話は今までたくさん読んできました。けれども、ここまで一つのことが好きで好きで、人生にはこれだけっていう人に出会ったのは初めてのような気がします。それはそれはすさまじい情熱です。前半のそれは絵に対して、そして後半はそれが手につかなくなるくらいに恋へと注ぎこまれます。
宮尾先生の筆も、いつもとは違います。明らかに他の作品にはない迫力があります。作中人物と一体化しています。
そして「女の一生」としても、ここまで読み応えのある物語はなかなかないと思います。いわゆる「普通の人々」の感動的な話とは対局にある、他人の評価を受け付けない猛烈な人生を送った女性「つうさん」に圧倒されるお話です。
女性に強力におすすめします!
宮尾登美子さん好きです ★★★★★
日本画、美人画家の上村松園の一生をつづった物語。宮尾登美子さんの文体は、とても淡々と話が進んでいきますが、しかしその文の奥にひそむ「女」の芯の強さにいつも感銘を受けます。宮尾登美子さんの本のなかでも、この「序の舞」はとくに女の強さを感じさせる作品だと思います。