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東福門院和子の涙 (講談社文庫)

価格: ¥1
カテゴリ: 文庫
ブランド: 講談社
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女性の生涯を女性の立場から物語った大作 ★★★★☆
「婦人画報」に連載されていた作品。女性読者をターゲットにした作品と言える。
 東福門院が8歳のときから亡くなるまで、奉公を続けたゆきという老婆が、自分だけが知る東福門院和子の生涯を一晩で語るという想定。文庫版で500ページを超す大作である。本文はすべて、ゆきの語り口調で進む。心の中でその語り口調をゆっくり楽しみたい。姫の側に生涯仕えた女性の立場で、主の悲しみ、側に仕える者たちの感情を赤裸々に伝える。あくまでも、将軍家から朝廷に嫁いだ一人の女性に仕えた女性の主観で語られる。そういった描かれ方を素直に受け入れて楽しみたい。
 その点で、歴史的事実や客観性を求められる読者には、やや不満を残す作品かも知れない。後水尾天皇の立場から描かれた作品があれば、ぜひ読んでみたいと思う。
高貴な女性の誇りと悲しみ ★★★★★
皇后になるべくして生まれた和子の生涯は、傍目には何不自由なく、幸せに見えても、実際はこの物語を語る侍女にすら計り知れないほどの悲しみを抱えたものだった。
この物語はその主となる物語のほかに、御所の中の生活、天皇となった人たちの人生がどのようなものかをかいま見ることもでき、その伏線もとても興味深かった。天皇という重責に苦しみ、御所内の楽しみは女性だけ、など、実際に侍女だった人ならまずは口にしないだろうと思われることにも触れられていて、そういうところに、作者宮尾さんの視点がふと表面に現れてることがあって、おもしろかった。
東福門院の娘、明正天皇の人生にも興味が湧いた。
悲しみの先に ★★★★★
東福門院和子に奉公していたという”ゆき”の思い出話で進むもの。
語り口がやさしく丁寧で、ゆったりと話は進みます。

随分聞き分けのいい姫だなあと感じて読んでいましたが、
実は毎夜のように涙をこぼしていたのです。

読んでいくうちに予測はできるのですが、それでもゆきが涙でぐしょっりにぬれた紅絹の切を見つける様子には読んでいてとても切なかったです。

どんな身分であれ、願っていたことはひとつだったはず。

その願いすら口にはできず、立場をわきまえた振舞いをしていても実ははとても重く、
深い思いを抱えてのものだったのです。

女性としての深い悲しみを抱えながらも自分のあるべき姿を見出していく姿は
とても強く、大きなものでした。

じっくり読むことおすすめします。

聖人のような ★★★★☆
二代将軍の娘、後水尾天皇の中宮・和子の一生を、そば付きの女性が語る物語。

和子の母、江与の生まれから始まる、和子の人格を形作った血縁、環境といったものから語られる。
当時としてはまれな、一夫一婦を貫き、両親と子供たち、という家族に育ったこと(後に、腹違いの兄弟が発覚するが。)が、繰り返し出てくる。

その思いを、入内してのちも持ち続け、帝の他の女御への移り気に苦しみのたうつ。
帝の血を絶やさないための、御所では当たり前のことが、彼女には頭で理解できても心で理解できない。
誇り故に、帝にお渡りをせがむことをしない。
二十代後半以降、女として愛されないことで帝を恨むかのような記述は、彼女自身が招いたことなのである。

彼女は、満たされない心を、子の養育や着道楽で癒す。結果として、帝の親王たちの養い親となり、京の芸術家たちの庇護というかたちに実を結んでいくこととなる。
親王が即位し、腹を痛めた娘たちは関白家などに嫁ぎ、彼女の人格、影響力は晩年に至って帝も認めるものとなる。

けして政争に関わることのなかった彼女が、子の養育という形で他の女御たちに差をつけていくあたりから、光を浴びる如く浮上していく。
それでいて、彼女は仏教に深く帰依し、最期を聖人のように尼たちに見取られて長寿の一生を終える。

両親に愛されかわいがられ、心根の良い少女だったのだろう。帝に愛され子供を多く上げることが自分の役目だと思って、お渡りの途絶えを涙したのだろう。
帝の愛が受けられないのならと模索した後半生が、やがては帝の尊敬を勝ち得て実っていく。
血が天皇家に残らずとも、名を残した女性の物語。

早くドラマ化を ★★★★☆
これまであまりとりあげられることがなかった東福門院の生涯。徳川将軍家の娘として生まれ、家康の五女市姫が夭逝したばっかりにその代役として入内しなければならなかった運命。幕府と朝廷を結ぶ政略結婚の具とされたというイメージが強かったけど、この原作を読んで、改めて和子の聡明さと彼女が果たした役割の大きさが理解できました。彼女は決して自分の生んだ興子内親王の即位(明正天皇)を望んではいなかったのではないか?我が夫・後水尾帝と他の女性との間にできた親王こそ即位させることが彼女の後半の人生の目標ではなかったのかと思います。そうして、また彼女は本阿彌光悦や雁金屋(尾形光琳・乾山)との交流・庇護を通して京都町衆文化の発展に寄与したことも納得できました。これまで和子はテレビドラマの世界では、酒井美紀(2000年NHK葵三代)片山美穂(1989年NHK春日局)杉田かおる(1989年関西テレビ大奥)野際陽子(1988年長七郎江戸日記)山口いづみ(1987年江戸城風雲録怒涛の将軍徳川家光)三浦リカ(1978年柳生一族の陰謀)などで演じられてきましたが、みんな脇役です。和子をヒロインにしたドラマが見たいです。