モディリアーニとその恋人エビュテルヌの生涯
★★★★★
2年前に「モディリアーニと妻ジャンヌの物語展」という美術展を観賞して以来、アメデオ・モディリアーニとその妻ジャンヌ・エビュテルヌのことが気になっていたのですが、偶然本書と出会いさっそく買い求めじっくり読みました。
モディリアーニの生涯を橋本治氏と宮下規久朗氏の解説で紹介しています。モディリアーニの彫刻作品も20ページから掲載してありますが、絵画と同様の特徴を備えており、表現したいスタイルが確立していたことをうかがわせます。
6ページに書かれていますが、病気と薬物によりモディリアーニは、病魔に侵されて35歳で亡くなりました。その2日後、エビュテルヌは彼の子を宿したまま投身自殺をします。あまりに悲劇的な二人の生涯でした。没後世界の人にこれだけ作品が愛されるとは生前想像もできなかったわけですが。
モディリアーニは、エビュテルヌをモデルにして多くの作品を残していますし、どれもが愛情に裏付けられた良い絵です。画学生だったエビュテルヌの画風がモディリアーニの影響を受けてどんどん似通ってくるのが印象的でした。まさしく寄り添っていく、という感じです。本書はふたりの人生をたどるように組まれています。
56ページ以下は、エビュテルヌの生涯とその作品が紹介してあります。様々な画家の影響を受けながら、絵の道を模索していた彼女ですし、モディリアーニと出会ってからは、そのスタイルの影響を受けました。その側面から光を当てますのでその作品の捉え方が理解できました。
彼の交友録も紹介してあります。キスリングがモディリアーニの葬儀費用の全てをだしたわけですが、以前住んでいたアパートの隣人同士だったことからの友情によるものでした。
楽しく知る
★★★★☆
芸術を凄くカジュアルに紹介するテレビ番組があるけれど、これはその本版。
豊富なカラー図版と親しみやすい観点、くだけた口調でモディリアーニの作品と人生を紹介。
第1章は宮下規久朗氏のインタビュー形式の解説。
第2章は橋本治氏のモディリアーニ論、というかその恋人(妻)ジャンヌ論。
作家の文章はやっぱり面白い。芸術鑑賞は人それぞれ。モディリアーニの人生を映画化した「モンパルナスの灯」の感想もあれこれと綴られ、見たくなります。
モディリアーニの死後、後を追った妻ジャンヌの遺品が公開され、新たに知られることとなった事実、特にジャンヌの写真については両者とも熱く語っています。
本当に意志の強そうな美人です。
カラーでないのが残念。
多くのモディリアーニ展を企画したマルク・レステリーニ氏のインタビュー(4頁)も載っています。
展覧会とともに!
★★★★☆
塗りつぶされたアーモンド形の目の肖像画で知られる画家の解説書。
展覧会に行くとかならず画家に関する本を買っていますが、これもその一冊です。
本書の第1部では、モディリアーニの生涯とその時々の絵を対談形式で振り返り、
第2部では、恋人ジャンヌエビュテルヌとの関係を通して画家の解説をしています。
対談形式であるためわかりやすい反面、もう少し深い解説がほしいと思うところもありました。
また、モディリアーニの絵一点一点を解説しているものと違って、
同時代に生きた画家やジャンヌの絵も含めてみられます。
この本でモディリアーニの絵を見ると、非常に劇画的に見えてしまったのですが、
本物はより芸術的だと感じました。
特に、展覧会では、
「レオポルト・ズボロフスキ」
「赤毛の若い娘」
「ジャンヌ・エビュテルヌ」
「大きな帽子をかぶったジャンヌ・エビュテルヌ」
の4枚の絵に感銘を受けました。
肌色がより生き生きとしていて、輪郭もはっきりしています。
また、個人的に、肖像画とともにカリアティード(女像柱)も
躍動感があり、とてもすばらしいと感じました。
モディリアーニ展へ行こう!
★★★★★
モディリアーニの残した作品の解説を
恋人であった画学生ジャンヌとの関係を
追ったり、同時代の画家達との関係を
明らかにしたりしながらやっています。
モディアーニが、古典作品、同時代の画家
そして恋人ジャンヌの絵画から受けた影響が
豊富な写真を楽しく見ながら理解することができ、
知識の乏しい私も楽しむことができました。
20世紀のはじめ「モディリアーニという画家を
登場させる時代状況」(橋本治)の香りが
ただよってくるような楽しい本でした。
本書発行と同時期に開催される
「モディリアーニ展」へは本書を持参して
行って来ようと思います。