清王朝成立の壮大な歴史浪漫!
★★★★★
最初は主人公である桂庄助の成長記録もしくはサクセス・ストーリーだと思っていたが、彼は単なる取材記者としての役割が大きいのだなと気づきました。そして彼は、司馬さん自身の分身なのだなということが僕にもわかりました。
本来なら中国人の作家が描くべき物語なのかもしれない。しかし、中国の現政治体制のもとでは偏った思想でのストーリー展開になってしまうのかもしれません。その点、一人の日本人を絡ませることによって割りに自由で公平な視点をもった物語になっていると思います。
史書や資料は清の歴代の皇帝たちが改竄を繰り返していたなど歴史の真相がわかり難い中、司馬さんの取材能力、想像力、洞察力がフルに発揮された力作となっています。
僕自身も、中国のその時代の新しい知識を吸収できて非常に嬉しい気持ちになりました。読み終えてみると、司馬作品の中でも相当上のほうにランクしたい本となりました。