ものすっごく厳しい祖母のしつけを受けて育った臆病でおとなしい女子高生ヒロミに、実は夜な夜な盛り場をうろつく不良少女ユミという別の人格が隠されているというストーリーです。このユミが面白い。盛り場をうろついて何をしているかというと、派手な格好をして独りで飲んで独りで踊ってる。奔放といっても孤独です。そして異様にケンカが強くて、自分の邪魔をする人間は平気で殺す。不良少女というよりヤクザの姐さんのようです。80年代ファッションもなつかしく楽しめます。 二重人格の一方ユミの活躍を少女マンガらしくドラマチックに描いた作品で、絵もきれいで飽きさせません。そしてときどきいいセリフがあります。「それはあんたが見たいと思ってるあたしなだけよ。人は自分の目というフィルターを通した虚像しか見ることはできないのだから。それぞれ愛したいと思うものを、憎みたいと思うものを。表面だけをきれいに写しだす鏡のように」
もうひとつ、この作品の外伝もお勧めです。この主人公の二重人格の原因となったと思われるオニのような祖母タカの、若き日のお話。華族の母の血を受け、気位が高く感情を抑え建前を通して生きるタカに向かって、妾腹の妹が言い放つ言葉:「あなたは自分が何を望んでいるのか分からない方ですものね」、ラストはじわっと重く怖い。