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昭和の風景 (とんぼの本)

価格: ¥2,100
カテゴリ: 単行本
ブランド: 新潮社
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少しずつ遠ざかる昭和の一瞬を切り取ったアルバム ★★★★☆
巻頭に書かれた東京都写真美術館長・福原義春氏の「写真が語る昭和の時代」という標題が本書のねらいです。平成の世になって20年、少しずつ昭和が遠くなっていくのは同時代を生きた者にとって何かしら惜別の情を感じます。

写真というものは実に雄弁に被写体の内面まで写しこむことがあります。まして本書に収められている写真は名カメラマンの残した貴重なものばかりですから、物言わぬ写真ですが、撮られた時の状況を見事に伝えるものでした。

モデルの中には鬼籍に入られた方も多いのですが、昭和という時代を生き抜いた証人という感じで眺めていました。写真の状況やモデルの紹介も詳しく、写真と解説とで昭和という時代、正確には戦後の世相を見事に浮かび上がらせていました。

もっとも「昭和」と言いましても戦後の日本からスタートしています。4部に分かれており、「オキュパイド・ジャパン(占領下の日本)の昭和20年代」「ヒーロー・ヒロインの時代  昭和30・40年代パート1」「高度成長期 昭和30・40年代パート2」「オイルショックからバブルへ 昭和50年代以降」という4章に分けられています。

秋山庄太郎、荒木経惟、大竹省二、木村伊兵衛、篠山紀信、ユージン・スミス、土門拳といった素晴らしい写真家の感性のさえをじっくりと味わえる写真集だと思いました。
戦後昭和の写真に訴えるものを感じ取る ★★★★★
 昭和にも戦前・戦中があった。本書で取り上げている写真の「昭和」はすべて「戦後の昭和」である。シンプルなタイトルが好みかも知れないが、読者に不親切というものだ。せめてサブタイトルで「戦後写真小史」と示してほしかった。
 本書における「昭和」は戦後から始まる。あの「戦争」は完全に抹殺されている。あの悲惨で脳裡から消えない戦争の翳りはどこに置き去りにされたのか。ないものねだりはしないことにしよう。平和な「真の昭和」は太平洋戦争に敗戦した昭和20年8月15日から始まる。
 オキュパイド・ジャパン(占領下の日本)の昭和20年代。ヒーロー・ヒロインの時代並びに高度成長期の昭和30・四十年代。オイルショックからバブルの時代の昭和50年代以降。以上のように時代区分され、その時代・社会を象徴するような東京中心の写真が掲載されている。
 写真家たちのカメラを持つ存在理由、カメラアングルはどのようなものだったのか。「あとがき」に次のような一節がある。

「現実の直視」から「不可視の現実の可視化」、そして「現実への問いかけ」という写真家の態度の変容は、まさに昭和という時代の変容と呼応する。
 本書に収められた写真は、「昭和」という時代の風景を現していると同時に、「昭和」という時代を生きた写真家が創造した風景でもあるのだ。

 つまり、単なる記録写真ではなく、訴えるものが背後に秘められている「芸術(的)写真」であるという誇りがあるように伺える。
 例えば、巻末の「昭和最後の太陽」は写真集「ラスト・コスモロジー」に収められたこの作品は、天体望遠鏡を使って、昭和最後の太陽を漆黒の闇の中に浮かび上がらせている。壮大で宇宙的ビジョンをもつ表現は、「昭和」という地上の終焉を象徴している。