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オリバー・ツイスト〈下〉 (新潮文庫)

価格: ¥580
カテゴリ: 文庫
ブランド: 新潮社
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なぜ今「オリバー・ツイスト」なのか ★★★★☆
 下巻ではオリバーの印象が全くといってよいほど薄い。ローズの登場によりもう一人の孤児の幸福の行方に気がとられるし、オリバーの出生の秘密を探る紳士たちの活躍が中心だ。しかしなんといっても圧巻なのは悪玉たちの破滅の場面である。鼻につく諧謔的な表現はなりを潜め、こと彼らの場面にあってはこれでもかという真実味に、読む者を圧倒する。この作品を社会風刺ととらえるなら、なぜ彼らが生まれたのかを考えることにこそ意味がある。この世界にあって「生きる力」にたけた「忍術小僧」の行く末こそ私の興味関心がある。イギリス人のものの考え方なのだろう。富める者が施しを与えて平安を得る。今も昔も格差社会にあっては根本的な解決の方法ではない。アフリカやアジア、南米等絶対的な貧困者がいる現代の世界で、本当の「勝ち組」はあり得ない。