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黒地の絵 (新潮文庫―傑作短編集)

価格: ¥746
カテゴリ: 文庫
ブランド: 新潮社
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画家・清張の能力を示す作品 ★★★★★
物凄い小説である。これだったら、ヒッチコックのサイコや、監督の名は知らないが、ソウ2なんか子供だましのホラーストーリーになってしまう。人間の本当の怖さはこういうものだと思い知らされる。オバマ大統領が見たら怒るかもしれない。このような態度で清張は古代史や美術史や考古学や人類学に臨むのだから、東大の先生なんて、赤子の手を捻るよりやさしいのはわかるような気がする。清張がなぜ高階秀爾なんかを評価しないのか、この小説を読めば十分理解できる。黒地の絵の解釈は絶対彼らにはできない。競争相手にこれではならない。でも民族学や古代史の本質ってこういうものなのかもしれない。描写の中に、さそり座を夏の夜空に見るのがある。天体はこういう時に観察するのだ。ところで話は飛躍するが、オランダの画家・フェルメールは天体観測と絵画の関係をどう見ていたのか。「宇宙に開かれた光の劇場」上野和男・著という本を、この小説を読み終わった後に読むことをお薦めする。フェルメールなら”黒地の絵”を解釈できることがわかるだろう。
名作揃い ★★★★☆
松本清張というと推理小説の大家という印象を持っているのだけれど、この黒地の絵では心境小説というか、ふつうの小説というか、事件があって犯罪があって、というモノは出てこない。
出来事があって、それを巡る人たちの気持ちが描かれているのだ、それもぞっとするくらいに。

女心を描ききれなかったのが「二階」
ストーリーとは裏腹にすっきりするのが「拐帯行」
やりきれない思いになってしまうのが「黒地の絵」
めんどくさいのが「装飾評伝」
(脇役が)やっちゃったよ-と思うのが、「真贋の森」
(主人公に)しっかりしろよと言いたくなるのが「紙の牙」
かわいそうにと思うのが「空白の意匠」
女心はやっぱりわからないと思うのが「草笛」
笑ってはいけないけれど笑いたくなるのが「確証」

空白の意匠と確証は、コメディ小説としてリライトしたくなるほど、そそる題材だ。
こんな時代があったのだと反省させられる ★★★★★
全てが興味深く精巧に計算された短編作品群だったが、
とくにここでは『黒地の絵』について。

このような時代があったのかと心から平和を謳歌する自分を想った。
悲しい結末に誰もが胸を痛めることだろう。

そして、いつものことだが、
清張のタイトルの付け方は絶品である。

『黒地の絵』・・・。
センスが良い。
嫉妬や恨みが生涯をかけた「復讐」に。今でも色褪せることのない現代小説。 ★★★★★
松本清張の現代小説「傑作短編集」の第二集。9編が収められているが、そのうち「二階」「黒地の絵」「装飾評伝」「真贋の森」「紙の牙」「空白の意匠」「確証」が記憶に残った。
「二階」は最初から惹きつけるストーリー展開となっている。坪内が現れるまで卒がない。妻の猜疑心が膨らむ過程と裏に隠れた事実の進行が上手い。
「黒地の絵」は空恐ろしい話である。二度と読み返したくない気持ちにさせる。
「装飾評伝」や「真贋の森」と合わせてこれら3作は、一言でいうと「復讐」というテーマに貫かれている。どれも手法は異なれ一生涯をかけて行う徹底した復讐である。恐ろしさを超えて、人間の業の本源を垣間見る思いがした。
「確証」は妄想を事実と思い込み、その確証を得るために、主人公があり得ない行動に出る奇想天外なストーリー。最後のどんでん返しも見事である。
「紙の牙」は世の中に有りがちな話である。対処の仕方を入り口で間違えたことが致命的であるといえるが、果たして入り口で毅然とした態度を取れる人間がどれほどいるだろうか。
「空白の意匠」は異色の作品だ。少し前の日本のサラリーマンの縮図が描かれている。結末は、今ならば誰もが不当と考えそうだが、未だにそうでないのかもしれない。
救いようのない復讐劇 ★★★★★
「妻を黒人兵に犯された男の凄まじいまでの復讐を描く」
という書評に大藪春彦ばりのアクションを期待したが、
予想を全く裏切る展開だった。
とにかく胸が痛んだ。
戦争が人間にもたらす狂気とむごたらしさ。
それを目前に、あまりに無力で立ちすくむしかない普通の人々。
男の復讐の仕方とは?復讐の対象とは?

救いようのない重苦しさと痛々しさに、フィクションと知りつつも
やり場のない怒りに満ちてしまった。
黒字の絵という題名が秀逸です。