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張込み (新潮文庫―傑作短篇集)

価格: ¥680
カテゴリ: 文庫
ブランド: 新潮社
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それぞれが独立したユニークな作品群。著者の才能がほとばしる短編傑作選。 ★★★★★
これまで推理小説はポー以外読んだことがなかった。本書は読書の楽しみを増やしてくれた。

「張込み」は「別な生命を吹きこまれたように、踊りだすように生き生きとしていた」さだ子を描写することで、「猫背の吝嗇な夫と三人の継子との生活」における平凡な顔の裏に潜む本当の姿を照射した佳作。

「顔」は面が割れていると思い込んでいる主人公井野と、古い記憶にうもれ忘れてしまった石岡の心理が交互に記される。着想が斬新で、作品の構想も読者を飽きさせない。

「声」は約80ページもあるだけあって、聞いた女がテーマの第一部と肺の石炭がキーワードの第二部構成のストーリー展開に厚みがあって読みごたえがある。

「地方紙を買う女」は新聞の断り文句に「小説がつまらなくなりました」と書いたばかりに、作家の怒りを買い、恨みから執念で事件の真相を突き止められてしまう筋書き。作家杉本の女の追い詰め方が鬼気迫るものがあって引き込まれる。

「一年半待て」は恐ろしい話だ。好きな男と結ばれるために、用意周到に夫殺しを計画する妻。ヒューマニストと呼ばれる評論家に対する痛烈な批判が込められているが、鮮烈な響きを持って終わる最後の落ちは見事の一言。

「投影」は腐敗した市政府を追いかける地方新聞記者の物語。特徴をもった登場人物生き生きと描かれ面白い。ただ、個人的には事件発生のための仕掛けに無理があるような気がする。

「カルネアデスの舟板」に出てくる大鶴教授の描かれ方は、ほれぼれするほどいやらしく、現実感のたっぷりの初老のおやじである。悲しい老教授が女に落ちるまで主人公の計算に狂いはなかったのだが。
短編集ですが読み応え充分 ★★★★☆
「張込み」
平凡な(平凡過ぎる)日常を送る主婦に突然訪れる非日常的な危機
張込みを続けていた刑事の計らいで主婦は再び日常に戻ることが出来た
犯人逮捕という本筋より、平凡な日常と危機的な非日常、この主婦にとってどっちが幸せなのだろうか、主婦の人生に思いが飛ぶ
「鬼畜」
お妾さんと3人の子供が本宅に押しかけてきて、お妾さんは子供を置いて里へ帰ってしまう
子供の始末をしろ、と迫る本妻
子供の始末を実行する夫
子供を置いて出て行った妾
本当の鬼畜は誰だったのだろうか
「顔」
映画俳優がふと見せる表情に、偶然列車内で見かけた殺人容疑者の顔を思い出した目撃者
「声」
300人の声を聞き分けることができる電話交換手
偶然繋いだ間違い電話の声を思い出したことで悲劇に見舞われる
「地方紙を買う女」
心中を装って、自分に纏わりつく男を殺害した女
「一年半待て」
働かず酒に溺れ暴力を振るう夫を殺害した妻
正当防衛で執行猶予2年、懲役3年の刑が下されるが…
「投影」
地方へ都落ちした元大手新聞記者が再び東京に戻るまでの数ヶ月
「カルネアデスの舟板」
昔お世話になった大学教授の復帰に手を貸したがばかりに自分の人生が少しずつ思うようにいかなくなった男が企んだ教授失脚の罠
どの作品も真犯人の追及のみならず何故犯罪が起きたのか
推理小説の本筋+人生、社会の厚みが描かれており存分に社会派松本清張を楽しめる1冊になっています
傑作推理短篇 ★★★★★
ある女性の人生の一断面を活写した「張込み」。余韻嫋々たる傑作です。刑事が一人で張込みをするはずがないとこの作品の「ミス」をあげつらう人がいますが(それはその通りなのだが)、これは僅かな瑕疵というものであって、張込みをする刑事はこの作品の場合一人でなければならない状況設定なのです。むしろ、その設定を生かして人生の断面を見事に描いた手腕を評価すべきです。
その他にも「顔」、「一年半待て」、「地方紙を買う女」、清張の初期作品としては珍しく読後感の明るい「投影」が収録されています。
昨今の水増しされた推理小説とは段違いの、中味の濃い作品集です。
なお、カバーが下品であるのには文句は言いたいところです。旧版の抽象画の方がよかったと思います。
清張の芸の旨味を感じる初期短編集 ★★★★☆
 松本清張初期の短編が八つ収められています。「張込み」「顔」「声」「地方紙を買う女」「鬼畜」「一年半待て」「投影」「カルネアデスの舟板」。
 なかでも、「鬼畜」と「投影」の二作品が印象に残ります。陰と陽とでもいった味わいが好対照なんですが、作品の根っこの部分で通じているところがあるように感じました。どこが?っていうと、「鬼畜」に出てくる三人の子供の長男と、「投影」に出てくる主人公の男。虐げられし者が鬱々として、「今に見てろよ」と怨念を抱くところ、そこに“復讐する者”が持つ共通した匂いを感じたのです。

 「鬼畜」は読んでいて、どうしようもなく暗い思いにとらわれました。血のつながっていない三人の子供を目の前から消し去ろうとする夫婦の話、それが「鬼畜」です。黒い汚点のように心にしみついて離れない、そんなやりきれない話ですが、これが読後、じわじわと効いてくるんですよ。ぞおっとします。

 それから、関係がないと思われるところを結びつけて、そこに旨味を出す面白さが清張作品にはあるように思います。“一緒に見なされないものを一緒に結びつけて考える”ということ。これはミステリの面白味のひとつですが、この妙味を出す手際の巧さが清張作品にはありますね。「地方紙を買う女」では、主人公の作家が読者からの葉書を読んで、それをあることと結びつけて考える件りがあります。一見なんのつながりもなさそうに見えたところに、ある関連性が浮かび上がってくる。離れた点と点を結んで、ひとつの絵に仕立ててしまう面白さがある。そこに、著者ならではの芸の旨味があると思うのです。

清張の芸の旨味を堪能することができる八つの短編 ★★★★★
 松本清張初期の短編が八つ、収められています。表題作の「張込み」から順に、「顔」「声」「地方紙を買う女」「鬼畜」「一年半待て」「投影」「カルネアデスの舟板」。

 とりわけ印象に残ったのは、「鬼畜」と「投影」の二作品。陰と陽とでもいった味わいが好対照なんですが、作品の根っこの部分で通じているところがあるかなあと、そんな気がします。「鬼畜」に出てくる三人の子供の長男と、「投影」に出てくる主人公の男。虐げられた者が鬱々として、「今に見てろよ」と怨念を抱くところ、そこに“復讐する者”が持つ共通した匂いを感じました。といっても、両者ともはっきりと形を取って復讐する訳ではありません。しかし、彼らが心に抱えた暗い気持ち、恨む気持ちに通じるものを感じたのです。「鬼畜」はもう、どうしようもなく暗い思いにとらわれました。血のつながっていない三人の子供を目の前から消し去ろうとする夫婦の話、それが「鬼畜」です。黒い汚点のように心にしみついて離れない、そんなやりきれない話ですが、これが読後、じわじわと効いてくるんですよ。ぞおっとします。

 さらに、“一緒に見なされないものを一緒に結びつけて考える”というところにミステリのひとつの面白味があるのですが、この妙味を出す手際の巧さ、それが清張作品にはあるのですね。「地方紙を買う女」では、主人公の作家が読者からの葉書を読んで、それをあることと結びつけて考える件りがあります。一見なんのつながりもなさそうに見えたところに、ある関連性が浮かび上がってくるんですね。離れた点と点を結んで、ひとつの絵に仕立ててしまう面白さ。そこに清張の芸の旨味を思うのです。