政変に対する一つの緻密な見解
★★★★☆
1980年初版で、やや古い本ではあるが、独自の緻密な調査と考察を貫いていて興味深い。核心を突いであろう論説は新鮮である。
ただ、歴史の解釈は各人さまざまだろうから、別の見方も出来るだろうし、それが歴史の面白さでもある。絶対的な正解のない歴史の世界において、史料重視で客観的な見方を徹底したとおっしゃるわりには、著者の主張、個性、嗜好が表に出過ぎているきらいもある。読者としても好みの別れるところだろう。
この政変の、後の歴史につながる意義については、素人の私にはわからない。しかし、今日でも現総理大臣が長州派自認の態度を隠さないのは、この政変後の大久保ら「維新の三傑」の死、そして来る伊藤博文ら長州派主導の時代が現在までずっと続いているためであり、少なくともこの政変の意義深さの証左ではないかと思うのだが。