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日本近代文学の名作 (新潮文庫)

価格: ¥420
カテゴリ: 文庫
ブランド: 新潮社
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   吉本隆明はめったに全国紙に書かない作家だが、毎日新聞の文化面で週1回連載した「吉本隆明が読む 近代日本の名作」(2000年4月~2001年3月)をまとめた本。タイトルが「日本近代文学の名作」に変わっているところに、まず興味をひかれた。文学は、いつの時点で近代から現代へ移行するのか。そんな基本的疑問に答えてくれそうな改題だ、と思ったのである。

   取り上げられている作家は、昭和の太宰治から、明治の夏目漱石にさかのぼる24人。この選択からすれば、太宰までが「近代文学」ということになる。冒頭、吉本は「親疎の感じがまだ生々しくて公正を期することができない作家」は落とし、「太宰治から逆に折り返すことになった」と断わっているが、そのあたりに、吉本の時代区分の基準がありそうだ。

   たとえば、本書で論じている作家以外の小川国夫や、島尾敏雄のことは「小川さん」、「島尾さん」と「さん」付けで語っている。生存している作家には、ある種の「おもんばかり」が働くのだろう。吉本が大新聞に書かない理由も、文芸評論家が巨大メディアを通じて、他者を批判するのは公正ではない、という「おもんばかり」なのかもしれない。江戸川乱歩の「陰獣」と、吉川英治の「宮本武蔵」を取り上げているのも興味深い。「宮本武蔵」は純文学にない物語性を持った本格小説として、「陰獣」は大正デモクラシーのイメージを象徴する作品として評価するのである。

   評論全体に感じられるのは、作家の倫理性を透視する、吉本の強い目線である。漱石の過剰で本格的な倫理性、武家社会の義理と倫理に対する森鴎外の関心、横光利一の古風な資質からくる倫理、高村光太郎のデカダンなわが身への自嘲、宮沢賢治の普遍的宗教観、岡本かの子の仏教者としての性意識、といった倫理性を近代文学の特性として摘出している。文学における「現代」は、そうした古風な倫理性が消えるところから始まる、ということかもしれない。(伊藤延司)

若手の吉本ファン!? ★★★★☆
僕より50才以上年上の吉本さん。大好きです。

いろいろな本を読んで自分なりに考えている時でも、ふと吉本隆明ならどう考えるだろう?
と思うことがよくあります。そんな自分にとって本書は興味深い作品でした。

とくに、芥川の章の最後、「下町の悪ガキがどういう文章を書けばいいのか、というのは
わたしたちにとっても重要な課題だった。わたしたちはリアリズムで下町を描くという方法は
とらなかった。かといって、芥川もいや、堀辰雄もいや、立原道造もいやだった。これらのだれとも
似てはダメだと思った。」という箇所が吉本さんらしいというか、とても印象に残りました。
面白う ★★★★☆
「こころ」ほか正統派解釈とは
ちがった面白さ
吉本風健在
ざっくりした語り口 ★★★★★
よいですね。

言葉を言い切ることに情熱を注いでいる吉本さんもよいですが、こんなかんじのざっくりした文章も好きです。

たとえば、江戸川乱歩の『陰獣』は、5ページ半くらいの解説ですが、『陰獣』については半分くらいふれて、あとは現代のミステリー作家や天皇制です。江戸川乱歩にはほとんどふれていません。あんまり読んだことがないことは告白しています。

構成者後記によれば、聞き書きです。

おなじく、ざっくりしたものに、
天皇制の基層 (講談社学術文庫)
があります。
これは対談です。
この間、単行本だったのに・・もう ★★★★☆
すぐ文庫本になった。本の装丁は、単行本の時が優れていると思う。「近代文学」らしくない、今度の装丁は。内容は、再度読んでみると、面白いし、もう一度昔読んだものを再読したくなるような導きの力が凄い。穏やかな語り口で、でも、結構自身の言いたいことは言っているところがいい。でも、選んだ作家は納得でも、選んだ作品はもうひとつで、ほかの作品の話が聞きたいと、思いもした。以前は「悲劇の解読」「書物の解体学」などでは、読んでみると、結構「説得されて」我が意を得た、とか、なるほど、と感心したが、本書を読むと、そうでもない、というか、あたりまえだが、著者の感性は随分違うものだと思うようになった。小林秀雄でもそうだが、どうも作品論を読むと出来栄えの凄さは別にして、どうしてこの作品からそんなことを思うのか、不思議になることがままある。それがまた楽しい。
やはり吉本は深い ★★★★☆
日本の近代文学について、作家ごとにコンパクトに、しかも鋭くまとめられている。
吉本さんは、目もあまり見えなくなり、足腰もかなり厳しいが、アタマの中は相変わらずすばらしい。いや、肉体的な衰えが逆に精神に反作用しているのかもしれない。

内容から一人、宮沢賢治を紹介しよう。彼が国柱会に所属し熱烈な日蓮主義者だったことが取り上げられ、にもかかわらず作品は宗教的なプロパガンダになっていない。その意味ではプロレタリア文学が政治的プロパガンダになっていることと比べて、賢治のすばらしさであると書いている。
然り、である。
作家の写真も載っているのだが、印象的だったのが川端が映画「伊豆の踊り子」のロケ中に吉永小百合を遠くから見ている感じの写真だ。自死した川端のことを思うと、なんとなく、とどかない「美」にあこがれている感じがした。
吉本さんの長文はかなり難解だが、語りおろしで、かつ短いので、要点がピシッと決まっている。これを機会に、もう一度各作家の作品にあたってみたくなった。