農学博士にして、「食の冒険家」を自称する著者が、あらゆる場所で体験した不味い食べ物に関して、ユーモアたっぷりにつづったエッセイ集。取りあげられている31品は、かつて昆虫やヘビ、ネズミなど、世界中の珍料理を食べ尽くしてきた著者にして「不味い!」と言わしめた「ツワモノども」である。「俺」という1人称でのぞんざいな語り口は、辛口で痛快そのものだが、それだけではなく、醸造学や発酵学を専門とする著者だけに、食文化への確かな知識を授けてくれる点も魅力だ。
なかでも、やはり目を引くのは、数々の悪食の武勇伝。カメムシの幼虫や、カラスの「ろうそく焼き」、羊の血の腸詰など、本書には、想像を絶するメニューが多数紹介されている。中国では、20年ものの自家製蛇酒の、あまりのアクの強さにのたうち回り、韓国では「ホンオ・フェ」という発酵させたエイのアンモニア臭に涙する。その光景は、まさに著者の言葉どおり「不味さとの対決」といえる壮絶さである。しかし意外にも著者は、その不味さを、新しい食の発見として楽しんでいるから驚かされる。
本書で、怒りをもって「不味い!」と断罪されているのは、そうした珍料理に対してではなく、ビールやカレー、刺身にラーメンと、私たちが普段から食べ馴れている食品に関してだ。著者は、化学調味料を多用するデパートの惣菜に不快感を覚え、冷凍保存した白焼きを平気で出す鰻屋の「職人根性の欠如」を嘆く。そこから浮かんでくるのは、あまりにも歪んでしまった現代社会の食生活であり、それを平然と受け入れてしまっている私たちの心の貧しさなのである。(中島正敏)
イラストが傑作
★★★★★
『不味い』と『ぶっかけ飯の快感』の2冊同時に購入しました。内容は前者の方が面白かった。
どちらにも天才としか思えない奇抜で不気味なイラストがあり声を出して笑ってしまった。
本の中に挿入されている数点のイラストを見るだけでも購入する価値があります。
うーん。いまいち。
★★☆☆☆
椎名誠氏の文庫本中、この人の話題があり、興味本位に買ってみました。
確かテレビでも活躍している人だったという記憶もあったので。
さて、いざ読んでみると農学者、醗酵学者であるという人物が書いている本にしては内容が薄っぺらい。
万人向きにあえて科学的説明は避けているのかもしれないが、だったら著者が学者である意味が無い。
「ご飯がベシャベシャに炊いてあって不味い」とか「古い油で揚げてあり不味い」なんて、誰が食べても当たり前な感覚だと思うんですが……。
ゲテモノ食いや大酒飲んだ事など、なんだか自慢話にしか聞えません。
また、一人称の「俺」というのも文章から浮いていて違和感がありました。
本文中に何度か自著の宣伝があったり……。
吉村作治氏や茂木健一郎氏と同類の人なのかな?
コストを考えてみよう
★☆☆☆☆
筆者が出会った不味い!食べ物を次から次へと千切っては投げ扱下ろす。ついでにその不味い!食べ物を世に送り出した者を断罪し続ける。でも、それなりの金額払えばもう少し救われると思うのだけど。
安くて不味いのは当たり前、どうせ不味い!と大声で主張するのならば、高くても不味い!者を集中して取り上げてほしかった。
読んでて不味さが伝わる本
★★★★☆
美味いと表現している本は数あるけど、これほど不味いを列挙した本は無い。
学校給食、病院食、ビール、水から、はたまた蛇、カラス、虫まで。
著者の小泉先生の表現の豊かな事。
読んでて臭いや食感が伝わってきました。
でも、本書で発酵したエイを不味いと言ってましたが、別書「発酵する夜」では美味しいと言ってた気が・・・。
醸造食品への愛に脱帽(笑)
★★★★★
この本、表紙のインパクトがずいぶんと売り上げに貢献していると思います。
山科けいすけ描くところの中年オヤジ、実にほんとに「不味い!」を絵に描いたような顔です。
私はこの表紙を見た瞬間大笑いして、そのまま衝動買いしてしまいました。
しかし本の内容も実に面白かった。
世界中を駆け回って「あえて」とんでもない食い物に挑戦する小泉先生の知的好奇心と体力、そして強靱な胃袋には脱帽。
そして読み終わった後に気がついたんですが、この本に紹介されているとんでもなく不味いものも、美味しいものも、みんな醸造食品(笑)。
小泉先生の発酵微生物に対する「愛」がよく分かります。
何の役にも立ちませんが、「へええ、こんな食い物が」と「世界は広いなぁ」と思わせてくれる一冊です。オススメ。